余命半年を宣告された科学者サマンサが、残りの人生を人工神経制御言語・ITPの研究に捧げる話です。
同じく長谷敏司氏の作品「BEATLESS」がアニメ化されたタイミングで、「BEATLESS」と一緒に購入していました。
「バーナード嬢曰く。」の3巻で紹介されていたので読みたくなった次第です。
「BEATLESS」もいずれ読みます。いずれな!
最初に言っておきますが、半分寝落ちしながら読んでいたので読み込み不足かもしれません。
なんかおかしかったら指摘してください。
あらすじというかキーワードというか
死は鏡
主人公サマンサ・ウォーカーの大学時代の恩師、ヨハンセン教授は、
「死は鏡だ。その鏡を覗くことで私は始まった」と言う。
時間が有限であることを認識することで、自らの目的意識が刺激される。
人は何者かになりたい
サマンサは、人工神経の最大手企業のオーナーの一人だ。
彼女たちは人工神経から一歩進んだ技術、神経の発火を模倣し意思や意味を脳内で作り出す言語、ITPの実用化を目指している。
ITPが実用化されれば、ITPは人間のOSとなり、あらゆる知識経験がソフトウェア資源として共有できるようになる。
更には、人々の”なりたい”という欲望も叶えることができる。
ITPの実用化のために彼女たちは”wanna be”という人格データを作った。
人は情報集積体
”wanna be”によると、人も情報集積体であり、人格データや物語と変わらないという。
人間社会そのものが大きな情報集積体であり、循環のために人々を消費を促す物語だ。
生とは抵抗
サマンサにとって、科学とは抵抗することだった。
自分の無力さと、不満足な世界を乗り越えてゆくために科学者を志した。
いつも彼女を突き動かしていたのは自分と現実へ向けた怒りだった。
”wanna be”はそんな彼女に、サマンサは周辺の情報を効率的に取り込もうとしていると指摘した。
人の物語
人も物語と同じだ。絶対必要なわけではないから、好かれなければ気にかけてもらえない。本当は必要ないから自由でいられて特別なものに見える。
人にはそれぞれ物語があり、誰かと関わるということは、自分のテキストの影響が外界に広がるということだ。
人は自分の好きな物語を選び、動機をもり立てている。
ことばと意味
”wanna be”は、人が自らをことばと意味で構築する状態は不自然でストレスなのだと言う。
人は自分自身のことばから解放されるために他人のことばの物語を読む。
人格と肉体
人は死を認識することで目的意識を持つ。そして物語に触れることで自分の物語を形作っていく。
死があるから生が実感できるし、意味がある。
人格データには、死も意味もなかった。だから人権もない。
人権とは、人格と肉体を持つ者の特権だった。
尊厳なく死んだ
動物の死も人の死も変わらない。人の死は物語の終わりでしかない。
感想
死について
死があるから人は目的意識を持てて自分がなりたいものを目指すことができる。
死は生にとって不可欠なもので、生に意味を持たせるために物語が必要になってくるんですね。
アペイリアちゃん...じゃなかった ”wanna be”からサマンサへの物語は、死は不幸なことではないということ。
サマンサから”サマンサ”への物語は、愛していたということ。
どちらも相手を救う物語でした。物語は救いのためにあるんですね。
まあ結局は死は生にとって不可欠なもので、生とは死ぬまでにどれだけ自分の物語を物語によってなりたいものに近づけられるかって感じではあると思います。
人格データというものがでてきたので、サマンサは「serial experiments lain」の玲音のようにデータとして生きて死を克服するのかと途中思いました。
玲音は自分の人格をネットにコピーし、肉体なんか不要だと考えて自殺してしまうロックな女の子です。
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まあコピーした人格データは自分ではないし、肉体もなく人権もないのであれでしたけどね。
物語について
私は、人と関わることと読書はそんなに変わらない、と考えています。
どちらも誰かの考えを自分に取り込む行為なので。
しかし、好きな物語を取り込むことによってなりたい自分に近づくことはできても、自分のテキストを外界に広げて社会に影響を与えることはできないんですよね。
「僕だけがいない街」の八代先生は言っていました。人生とは心の中の穴を埋めることだと。
たまには人と関わって自分のテキストを循環させてみてもいいかもしれませんね。
ここ最近はゲームやる気力と体力がないのでしばらくは小説と漫画の感想が連続すると思います。