唯唯漂うただの海藻

本やゲームなどの感想とか好きなことを書いていく。

「新世界より」 感想-想像力こそが、すべてを変える。-

数年前に単行本買って、その後電子版まで買ったのにページ数の多さに辟易して読まずに放置していたんですが、最近は読書モチベが高いのでやっと読み終えることができました。

アニメ版は8年前にリアルタイム視聴済みです。

新世界より 文庫 全3巻完結セット (講談社文庫)

新世界より 文庫 全3巻完結セット (講談社文庫)

  • 作者:貴志 祐介
  • 発売日: 2011/01/14
  • メディア: 文庫
 

 

 

 

ストーリー

1000年後の日本。人類は「呪力」と呼ばれる超能力を身に着けていた。

注連縄に囲まれた自然豊かな集落「神栖66町」では、人々はバケネズミと呼ばれる生物を使役し、平和な生活を送っていた。その町に生まれた12歳の少女・渡辺早季は、同級生たちと町の外へ出かけ、先史文明が遺した図書館の自走型端末「ミノシロモドキ」と出会う。そこから彼女たちは、1000年前の文明が崩壊した理由と、現在に至るまでの歴史を知ってしまう。

禁断の知識を得て、早季たちを取り巻く仮初めの平和は少しずつ歪んでいく。

引用元:Wikipediaより

詳しくあらすじを書き出すと尋常じゃない長さになるのでざっくりと書きます。

夏季キャンプに行ったら偶然にも世界の歴史を知ってしまい、更にはバケネズミ達の戦争に巻き込まれてしまう12歳編が第一部。

なんとか生き延びた2年後、瞬という主人公の仲間の一人が業魔化して死んでしまい、瞬との記憶を封印されてしまう14歳編が第二部。

その12年後、夏祭りの最中にバケネズミ達から襲撃され、なんとかバケネズミ達の反乱を鎮圧しようとする26歳編が第三部って感じでしょうか。

詳しくは本編読むかアニメ見ていただければ。

アニメは2クールもあったのでかなり再現率が高かったと思います。

主演声優の種田梨沙さんが歌うEDが好き。確かアニメ新世界より種田梨沙さんのデビュー作だったはず。

漫画の方は試し読みをチラ見しただけですが、ToLOVEるみたいになっててコレジャナイ感あります。

感想

新世界より」 のテーマ


ドボルザーク 「新世界より」 家路 From the New World - Largo.wmv

最初に言ってしまうと、「新世界より」 のテーマは、社会を安定させるにはどうすればいいか?

といった感じのことだと思います。

新世界より」の世界では、全ての人間が使い方一つで街一つ簡単に全滅することができる呪力という危険な超能力を持っています。

なので、攻撃的な衝動を抑える攻撃抑制、同種を攻撃しようとすると死に至ってしまう愧死機構、というものが人間の遺伝子に組み込まれました。

そして、十七歳までに少しでも危険な徴候があると容赦なく処分されてしまいます。

バケネズミ達の反乱は、このような社会体制の弱点を突かれた形になりますね。

ですがそれよりも一番の問題は、十七歳以下の子供達やバケネズミ達を人間扱いしていなかったことでしょう。

悪鬼と業魔

悪鬼と業魔について簡単に言うと、悪鬼とは攻撃抑制と愧死機構が効かず、他人を傷つけることに抵抗がなく喜びを感じる人間です。

業魔は、人間不信に陥ってなんでも一人で抱え込み、無意識に他人を傷つけてしまう人間です。私みたいな奴ですね。ちゃんと自覚はしています・・・!

 これまでは、悪鬼や業魔が誕生するのは突然変異によるもので、偶然の産物と考えられてきた。だが、そのレポートによると、過去に悪鬼や業魔が出現した事例と、その十年前の社会情勢には、あきらかな相関関係が見られたらしい。
 その原因については、まだ仮説の域を出ないものの、共同体を構成する多くの人々が、著しい緊張や、感情的な動揺に曝された場合、呪力の漏出によって遣伝子に変異が起き、攻撃抑制と愧死機構が不完全な子供が生まれてくる確率が高くなるのだという。
 また、そうした遺伝子の変異に加え、精神的に不安定な両親によって育てられた子供は、業魔と化す確率が飛躍的に高まるという分析もあった。

引用元:「新世界より」闇に燃えし篝火はより

悪鬼や業魔になる徴候がある子供がいれば処分するしかありませんでしたが、社会体制を根本から変えればそもそも悪鬼や業魔が生まれてこない社会を作ることができるかもしれません。

想像力こそが、すべてを変える。

想像力が足りないよ

「ねえ。わたしたち、本当に変われると思う?」
「変われるさ。変わらなきゃ。どんな生物も、変わり続けることで環境に適応して、生き抜いてきたんだから」
 問題は、どう変わるかということだろう。
 わたしは、それに対する自分の意見を、まだ、人に聞かせたことはない。とても賛同を得られるとは思えないからだ。
 だから、ここにだけ書き記しておこう。
 攻撃抑制と愧死機構は、たしかに、平和と秩序をもたらしたかもしれない。
 だが、それは、あまりに硬直的で不自然な解決方法だったのではないか。
 固い甲羅によって身を守っている亀は、いったん、甲羅のひび割れから中に虫の侵入を許すと、好き放題に身体を食い荒らされるのを、どうすることもできない。
 攻撃抑制と愧死機構の裏をかかれてしまうと、どんなに恐ろしい事態が起きるのかは、十年前の事件や、過去の悪鬼の事例が証明済みだろう。
 わたしたちは、いつか、この二つの重い枷を、脱ぎ捨てなくてはならない。
 たとえ、そのために、もう一度、すべてが灰燼に帰することがあっても。

引用元:「新世界より」闇に燃えし篝火はより

悪鬼や業魔の両方に足りないもの。それは共感力だろう。

共感さえしていれば、その人を簡単に傷つけることはできなくなるはず。

他者と共感すること。それは想像力を働かせることだ。

なぜ攻撃抑制と愧死機構は人間には効き、元は人間であったバケネズミには効かないのか。

それはバケネズミが人間とは異なる容姿をしていたから。

人々は、自分とは異なる姿を持つバケネズミ達のことを理解・・・どのような考えを持っているか想像しようともしなかった。

悪鬼や業魔を生み出さないため、また、再びバケネズミ達と争いを起こさないようにするためにも、人々は他者へ歩み寄り、想像力を働かせ、共感していかなくてはならない。

想像力こそが、すべてを変える。

 

以下雑感

なんとなく伝わったでしょうか?

テーマが明確でしたので今回は書きやすかったです。と自信満々に言いながら間違っていたら恥ずかしいですが・・w

人間とバケネズミの話は、人種問題などにも共通するんじゃあないでしょうか。

人は他者に少しでも自分と違う点を見つけると拒否反応が起こってしまうことがあります。

ですが、相手を理解しようと歩み寄り、想像力を働かせて共感することができれば、拒否反応も消えてなくなり、うまくやっていけるのではないでしょうか。

まあそんな簡単にはいかないかもしれませんけどね。私も未だに全然外出る気になりませんし・・・5月入ってから2回しか外出してない・・・外出自粛バンザイ\(^o^)/

そうそう、共感といえば、アニメ見ていたときよりも今回小説読んだときのほうが圧倒的に物語にのめり込めました。

どの作品でもそうですが、アニメよりも小説のほうが断然物語にのめり込みやすいですね。

真理亜や守が死んだり人々が虐殺されたりするシーンはアニメ版だとほーん(ハナホジ)としか思わなかったのに、小説読んでるときだとアッアッアッ(過呼吸)となりました。想像力が足りませんね(笑)

いうてアニメ見たのは8年も前で今よりも更に頭が回っていない時期でしたのでそれもあるかもしれませんが。

終盤はモンスターパニックものと化す「新世界より」ですが、どんな虐殺シーンよりも、殺された親友のたった一人の忘れ形見を殺さなくてはならないっていう状況が気持ち悪かったです。

あの子にも救いはないのかと思いましたけどどうしようもなかったですね。悲しいなあ。

というかそもそも早季達が真理亜達を探しに行った時に木蠹蛾コロニーを攻撃しなければ真理亜達がスクィーラの手に落ちなかったんじゃないかと思うのですが。

あの時はたぶん真理亜達は木蠹蛾コロニーの庇護下にいたでしょうし・・・

まあどっちにせよ真理亜達がスクィーラの手に落ちるのは時間の問題だったかもしれませんが、真理亜達が殺されてその子供が殺人鬼になってしまった原因が主人公達にもあると考えるとさらに気持ち悪くなってしまいます。

あっそうだ(唐突)、モンスターパニックものの小説といえば私は絶深海のソラリスです。

絶深海のソラリス (MF文庫J)

絶深海のソラリス (MF文庫J)

 

予備知識ゼロで読んだのでちょっときつかったです。

閑話休題

これは他の作品読んでてもしょっちゅう感じることですが、これほど深い物語設定を矛盾なく一から考えられるのは本当にすごいと思います。

この記事に書いた意味とは少々異なりますが、

想像力を鍛えていきたひ・・・