唯唯漂うただの海藻

本やゲームなどの感想とか好きなことを書いていく。

「遥かに仰ぎ、麗しの」感想-人と人が出会う事には意味がある-

遥かに仰ぎ、麗しのタイトル画面

ノベルゲーム感想記事1年3ヶ月ぶりってマジ?

ポケモン剣盾が悪いよポケモン剣盾が。

まあテイルズオブヴェスペリアとかファイアーエムブレム風花雪月とかもノベルゲームみたいなものだし多少はね?

 

 

はじめに

このゲームは美少女ゲームアワード2007大賞受賞作品です。

かなり昔のゲームですね。

物語をざっくり説明すると、自身も少し闇を抱えた新任教師が少し闇を抱えた生徒達を救っていき、自身も救われていく話です。

このゲームの特徴として、序盤の選択肢で本校編か分校編かに物語が別れ、それぞれシナリオライターが別なので物語の雰囲気や主人公の性格など変わってくるっていうのがあります。

プレイする前から話には聞いていましたが、これが想像以上に変わってきて困惑でした。

まあその辺りのことはちょっと突っ込んでいかないと伝わりづらいと思うのでまた後で書きます。

プレイ時間は34時間半です。

古のカウントダウンタイマーソフト、MeasurePATを使って測っていたのでほぼ正確だと思います。

プロローグ1時間、各ヒロイン5時間半ずつくらいですね。

おすすめ攻略順は栖香→美綺→邑那→殿子→梓乃→みやびです。

前3人が分校編ヒロインで、後ろ3人は本校編ヒロインです。

殿子と梓乃は前後してもいいですが、後の4人はこれが安定です。理由はやればわかります。

各ヒロイン感想

栖香

栖香ルートテキスト

少しの誤解がきっかけで大きな事件に発展する話。

問題が起こり始めてからは、こいつら少しは話し合えよと終始思いながら読んでいました。

栖香たちがうだうだ悩んでいたことは両親達と話し合えば秒で解決することに過ぎず、相互理解・・・お互い歩み寄ることの重要性を説いているルートだと思います。

相互理解というのは他のルートでも共通しているテーマの一つでして、そういう意味ではわかりやすい話だったかもしれません。

美綺

美綺ルートテキスト

このルートはどちらかというとヒロインの美綺よりも主人公の司が救われる話。

美綺は凰華女学院分校の生徒の中でも数少ない“親からの愛をしっかりと受けて育った生徒”であり、司がその美綺からの愛を受けることで再び人を愛することができるようになる話ですね。

あと、このルートでは栖香の問題を美綺が本当に秒で解決してしまいます。

つよい。以降の他のルートでも水面下で美綺がさくっと解決しちゃってるんですよね。

司が関わらないほうがどのヒロインもうまくいくんじゃないかと思い始めたのがこのルートです。まあ実際はそういうわけではなかったんですけれども。

あとここまでの二人のヒロインに不満点がひとつ。✕✕シーンがムダに多い。

全20シーン中14つがこの二人のシーンです。えぇ・・・

邑那

邑那ルートテキスト

分校編の事実上黒幕、邑那のルートです。このルートで分校編の謎がだいたい解けます。

このルートで強調されていたのは、画像の通り世界は光の当て方で見え方ががらりと変わってしまうもの、ということ。

分かりづらいので、”今見えている部分はその人の一面に過ぎない”とでも言い換えましょうか。

これは分校編のどのルートでも言われていたことで、特にこのルートではあるキャラクターの意外な素顔が明らかになります。

まあそういうわけで人というものは簡単には理解することができないからお互い歩み寄ることが大切なわけですね。

あとこのルートで重要なのは司と渉と燕玲の対比でしょうか。

境遇が同じでもそこから出会った人によって善人にも悪人にもなりうるって感じですね。

殿子

殿子ルートテキスト

親からの束縛によって自由に生きられない少女の話。あと如月千早と声が似ている。

ここからは本校編ですが、本校編に入って驚いたのが司の性格ですね。

なによりも意志が強い。分校編の司と違ってウジウジ悩まず行動力があります。

で、殿子ルートですが、殿子ルートのテーマも意志の力でしょう。

自由とは、状況や手に入れるものではなく、自らの強い意志によって示し続けるもの。

殿子は一度失敗したらすぐ諦めるから自由ではなかった。失敗しても挑戦し続ける揺るがぬ意志と強い行動力こそが自由というものだったんですね。

それに比べて司は誰よりも自由だったと。

梓乃

梓乃ルートテキスト

対人恐怖症の少女の話。

他人による変化を恐れ、変化の申し子である司を最初は拒絶しますが、何度も助けられていくうちに受け入れていきます。

そうして彼女は他にも彼女に手を差し伸べてくれている人がたくさんいることに気づきます。

テーマは他者と向き合うこと。

梓乃は動機は不純だったけれども司を一人の人間として向き合うことでいろいろなことに気づくことができました。

他者から差し伸べられた手から逃げ続けて孤独に生きたとして、それは生きていると言えるのだろうか。引きこもりの私には耳が痛い話です。

まあでも対人恐怖症ってそう簡単には治りません。

対人恐怖症で真に怖いのは知り合いよりも赤の他人であり、梓乃が対人恐怖症を克服するのはまだまだ先になるでしょう。

でも梓乃は私と違って意志が強いですし、おそらくいずれは克服するでしょうね。

みやび

みやびルートテキスト

実家から見捨てられた少女たちの話。

両親の期待に沿おうと頑張っているが、それが空回りして学園の人たちとの確執を生んでおり、司がサポートに入ったことですべてがうまくいきだしました。

相手のことを考えて行動していれば相手もそれに答えてくれるし、愛が欲しければ愛してくれる人を見つければいいし、居場所が欲しければ作ればいい。

テーマとしてはうまい言葉が思いつきませんが、キーワードとしては、家族、愛、居場所でしょうか。

みやびちゃんぷりちー。

テーマについて感想

ヒロイン感想だけでは伝わりづらいかもしれないので全体的なテーマからの視点で見ていきます。

凰華女学院分校という牢獄

一切の望みを捨てよ

凰華女学院分校の生徒は親から見捨てられた子供ばかりです。

学園から外に出るだけでもややこしい手順が必要だし、親からの許可が降りないと卒業できないので十年以上卒業できていない生徒もいます。

一見優雅に見えるこの学園ですが、実は悲しみと絶望感で満たされています。

みやびちゃんテキスト

そんな閉塞感をどうにかしようと頑張っていたのが理事長であるみやびちゃんでしたが、頑張りすぎるがゆえに空回りしていました。

そんなとき現れたのが司です。

司という人物

滝沢司テキスト

司の"誰も見捨てない。誰も裏切らない。"という強い意志の根幹は、自身が親に捨てられて今の両親に救われた経験にありました。

自身を救ってくれた今の両親を尊敬しているから誰も見捨てないし誰も裏切らない。

司のそういった姿勢は、悲しみの中にいた生徒達を救っていきます。

親からの愛を受けられなかった生徒たちには、司のように無条件に愛を与えてくれる存在が必要だったわけですね。

輪るピングドラムかな?

あ、輪るピングドラムといえば今期アニメのワンダーエッグ・プライオリティが少女革命ウテナみあって面白そうなのでみなさんも見ましょう。

卵を割って、セカイを変えろ。とかまんま少女革命ウテナやん?

wonder-egg-priority.com

閑話休題

無条件に愛を与えていく司ですが、実の両親に捨てられたという司のトラウマは完全に癒えておらず、愛した後に捨てられるのが怖く、本気で人を愛することはできずにいました。

幸せとは?生きているとは?

遥かに仰ぎ、麗しのでいう幸福

これは私の持論の一つですが、幸せとは誰かの役に立っていると実感することです。

これが派生して人に迷惑かけるくらいなら外に出ないほうがいいという持論にもなるんですがまあそこは置いておきましょう。

とにかく、人の輪の中で生きることこそが幸せであり、生きるということなのです。

だから人は他者を愛すし、家族を作る。人には愛する人、守る者が必要なのです。

人の輪の中で生きる

相手のことを考える

人の輪の中で起こるトラブルは、ほとんどが相互理解が足りないせいで起こるものです。

なら話し合えばええやん?ってなりますが、そううまくいくものでもありません。

特に凰華女学院分校の生徒は親に捨てられて荒んだ子達ばかりなので、そう簡単に心を開くことができないのです。

みやび達は司という強い意志の持ち主が現れたことでいい方向に進むことができましたが、司が現れなければもうしばらくくすぶったままだったでしょう。

人と人が出会う事には意味がある

プロローグテキスト

司が干渉することで話がややこしくなったヒロインがいる。とヒロイン感想のところで書いたかもしれませんが、それは少し間違いです。

司が深く干渉した(ルートに入った)ことでヒロインはより良い方向に向かってるし、あまり干渉していなくても(ルートに入っていない)司の影響は受けており、問題は解決しているのです。

誰のルートに入ろうとも他のヒロインの問題は水面下で解決していますが、邑那ルートに入らなければ邑那の祖父の真意は明らかにならなかったでしょうし、殿子ルートに入らなければ数学者の才能に気づかなかったでしょうし、梓乃やみやびもルートに入らなければ問題解決に更に時間がかかったでしょう。

ルートに入らなくとも、美綺は司がいなければ栖香を助けに外に出れなかったかもしれないし、みやびは丸くならなかったかもしれないし、殿子は授業に出なかったかもしれない。

なんにせよ司が凰華女学院分校にいる時点でみんな大なり小なり影響を受けているわけですね。

そういった変化が人と人が出会うのには意味があるってものじゃないでしょうか。

凰華女学院分校という居場所

みやびエンドテキスト

司がいなくなったらまた凰華女学院分校は牢獄になってしまうのか。みやび達としてはそういうわけにはいきません。

凰華女学院分校の生徒達が荒んでいたのは環境のせいでもありました。

外出すら満足にできず、季節の行事もつまらないものばかり。

みやび達はそういったものを変えていき、凰華女学院分校をみんなで笑い合える場所に変えていきました。

そうやって人の輪の中で生きる場所で学んだ生徒達の悲しみと絶望は癒え、司のように強い意志を持った人物に成長することでしょう。

雑感

ノベルゲームという箱庭

ノベルゲームというのは箱庭だと思います。

ある一定のキャラクターしか登場せず、舞台もあまり広くない。

特にこの「遥かに仰ぎ、麗しの」では顕著で、学園の外に出ることはほとんどありませんし、キャラクターも限られ一般人の声というものもありません。

私はこの箱庭を、辛い現実から逃げ出した先だと考えています。

そういって逃げ出した先でいくつかのメッセージというか生きるためのヒントを得て現実へ戻っていく。そういった作品が私は好きです。

遥かに仰ぎ、麗しの」はその条件にぴったり合っていました。

全ルート終了後のエピローグで流れる曲は卒業ソングっぽくて、現実へ戻っていく読者を見送ってるのかなとうるっと来ました。

私は逃げ出してばかりですが、少しは頑張ろうという気になりました。

まあ頑張りませんけどね!

本校編と分校編のライターの違い

本校編のライターは「こなたよりかなたまで」や「六畳間の侵略者」で知られる健速さん。分校編のライターは単独作品はあんまり知りませんでしたが「ティンクルくるせいだーす」とかに関わってる丸谷秀人さんです。

読んでみた印象ですが、健速さんはテーマなどから論理的に計算してシナリオを書いていて、丸谷さんはテーマはおまけで感情に従って書いているって感じでした。

これは個人の好みの問題だと思いますが、私は健速さんのシナリオのほうが好きです。

テーマというかやりたいことが伝わってこないとなかなか感情移入できない人間ですので。

栖香→美綺→邑那と謎がだんだん解けていく感じは好きでした。

あと、司の性格ですね。

本校編の司は捨てられてDQNになって恩師に出会って立ち直ったって感じですが、分校編の司は捨てられて全てに絶望して陰キャになってなんだかんだあって立ち直ったって印象でした。

ぜんぜん違う。分校編の司には本校編の司のような強い意志は感じられない。

これも本校編のほうが好きな理由ですね。

✕✕シーンの必要性

✕✕ゲーに✕✕シーンっていりますか?

まあ✕✕ゲーなら✕✕シーンがメインかもしれませんが、✕✕ゲーに✕✕シーンは必要ないと私は思います。

リトバスで✕✕したことある人いるのかって話ですよ。いないでしょう?

梓乃ルートとか✕✕シーンないほうが自然ですし。対人恐怖症で手が触れるのも一苦労な梓乃があんなことできるわけないでしょう普通に考えて。

まあ✕✕シーンいらないと言いつつカットされるのはなんか悔しいのでコンシューマ版より原作買ってしまうことのほうが多いんですけどね。

今回久しぶりに✕✕ゲーをプレイして✕✕シーンはいらないと確信したのでコンシューマ版も積極的に買っていこうと思います。

最近PSVitaを妹から譲ってもらったところですしね。

PSVitaのソフト調べたらギャルゲーと乙女ゲーばっかで草草の草でした。

SwitchとPSVitaはその辺のゲームと相性いいんですよね。私も歳のせいか長時間座ってプレイするの辛くなってきましたし。

教育について

みやびちゃんや司のような教育者が少ないのは悲しいことです。

一番悲しいのは学校が教育機関というより就職予備校になっている現状でしょうか。

一人一人と向き合わず、型にはまった人間にしようと洗脳している。

幸福とは誰かの役に立っていると実感することだと言ったように、個人主義な人間にするよりも人を助けられる人間になるように教育したほうがいいと思うんですけれど。

そんなんだから日本人の幸福度ランキング低いんですよ。

私がガッチガチの進学校にいたからそう思うだけで普通の学校にはいい教師がいっぱいいたのかもしれませんが。

私から言わせると辛かったら学校は行かなくていいです。ストレスを抱えて生活していると全てが壊れてしまう。

司も言っていたように、余裕がないとろくなことになりません。

家に引きこもってゲームしてたほうがマシですね。(元不登校児並みの感想)

最後に

本当は1週間くらいでさくっと終わらせるつもりだったんですが、ポケモンコロシアムやったりPC壊れたりその間シークレットゲームを先にクリアしてしまったりしてクリアまで1ヶ月半もかかってしまいました。

シークレットゲームは本校編のライターの健速さんの作品ですのでバトルロワイヤルものという私が苦手なジャンルでありながらも楽しくプレイできました。

✕✕ゲーやっていながらも実は私はエログロが苦手なんです。その点シークレットゲームはテーマの都合上で4ぬキャラクターが決まっていく感じなのであまり気になりませんでした。

遥かに仰ぎ、麗しの」が愛にトラウマを持った主人公が再び人を愛することができるようになるまでの物語なら、「シークレットゲーム」は大事な人を守れなかったことを後悔している主人公が自分を許して先へ進めるようになる物語ですね。

感想は気が向いたら書きます。

Switch版ですが、大型連休によく半額セールをしているので欲しい人はマイニンテンドーストアでお気に入りに入れておくといいと思います。810(野獣先輩)円でお買い得です。

store-jp.nintendo.com

シークレットゲームの続編のリベリオンズは購入してはいますがライターが健速さんじゃなさそうなのでプレイするかは微妙なところです。

次は「穢翼のユースティア」をプレイしたいと思います。

その次は「金色ラブリッチェ」「恋する乙女と守護の楯」「ナツユメナギサ」「はつゆきさくら」この辺りが気になってます。

まあPC組み直して金欠なのでいつプレイするかは未定ですが。

穢翼のユースティア」は10年前にプレイしたのを再プレイなのでそんなに時間はかからないと思います。話一切覚えてませんが。

ほな、また・・・。

遥かに仰ぎ、麗しの ビジュアルファンブック

遥かに仰ぎ、麗しの ビジュアルファンブック

  • 発売日: 2007/04/24
  • メディア: 大型本