唯唯漂うただの海藻

本やゲームなどの感想とか好きなことを書いていく。

「ナツユメナギサ」感想-過去を受け入れ、時には楽しかった思い出を振り返りながら前へ進む-

ナツユメナギサトップ

久しぶりのエッッッッゲ感想記事ですね。『時計仕掛けのレイライン』は実質エッッッッゲじゃないので2ヶ月半ぶりくらいでしょうか。

今回感想を書く『ナツユメナギサ』という作品は、2009年に『SAGA PLANETS』から発売された作品です。『SAGA PLANETS』の作品をプレイするのは私は今回が初めてでした。

また、個人的なことですが、4年前に今は亡き某b姉貴からおすすめされたゲームでもあります。4年の時を経てやっとプレイしました。今まで忘れていて誠にごめんなさい。

 

 

あらすじ

本島から離れた場所に位置する常夏の街、臨海副都心「hope」。街中に植えられたヒマワリなどが年中咲き誇り、蝶の姿をした妖精が舞い、街のあちこちに「野良ペンギン」と称されるペンギンが歩いているのが当たり前の光景である人工島に、一人の少年が流れ着いた。少年の名は郡山渚、なぜかここに流れ着くまでの一切の記憶を失っていた。

大学の援助もあり白波学園に編入した渚は、「真夏のクリスマス」を1ヵ月後に控えていた白波学園での生活の中で少女達と出会いつつ、夢の中だけに出てくる「大切な人」の幻影と共に「真実の自分」と出会うため、自分の過去を模索する。そして、長い夏の終わりに渚がたどり着く自分の過去と、この物語の真実とは…?

引用元:Wikipedia

舞台は常夏の島で、主人公は記憶喪失の少年、渚という人物です。渚は、その常夏の島で4人の少女と出会い、日々を過ごしていきます。

推奨攻略順は、つかさ→はるか→羊→真樹→歩→ナツユメ

もしくは、つかさ→歩1→はるか→歩2→羊→歩3→真樹→歩4→ナツユメ

です。お好みでどうぞ。

以下はネタバレ注意です。

感想

ロビンソン症候群

各ルートで重要になってくるのは、「ロビンソン症候群」という言葉です。(調べた感じ実際にはこんな病気はなさそう)

相反する2つの感情によって現実を生きられないヒロイン達をどう救っていくかというのが主題になってきます。

つかさ

ナツユメナギサ、つかさ

つかさはクリスマス以降、大樹からの呪いを受け、幼児退行してしまうようになってしまいます。

ですが、つかさが幼児退行してしまうのは、家族みんなの仲が良かった子供の頃に戻りたいという願望からでした。

つかさはその感情を自覚し、昔の思い出に逃避するよりも今自分を大事に思ってくれる人を大切にすると決意したことで、呪いから解放され、母親を許すことが出来たのでした。

つかさの相反する2つの感情は、「母親を許したい」と「母親を許せない」です。過去よりも今に目を向けることで解決することが出来たわけですね。

世界の謎はほぼ明かされませんが、テーマとしての要点は抑えていたと思います。チュートリアル的なルートでした。

青山ゆかり嬢の声を聞くと、ああ昔のゲームやってるなあっていう気分になります。

はるか

ナツユメナギサ、はるかその一

はるかルートですが、実際は、はるかとアリアの同時攻略ルートだったと思います。

まずははるかから。

はるかは病弱な人物で、毎日が幸せだからいつ死んでもいいと、生きるのを半分諦めていました。

ですが、いざ死に直面してみると、死ぬのが怖くなり、生きたいという気持ちが強くなりました。

しかし、現実はそう甘くはありません。はるかは子を身籠り、出産して死ぬか、子を堕ろすかという選択を迫られます。

ナツユメナギサ、はるかその二

ですが、子を残して死ぬことは悪いことなのでしょうか。自分の生きた証が残り、この世界に生き続けてくれる。それは、永遠に生きることと同義なのではないでしょうか。

ナツユメナギサ、アリア

そしてアリア。

アリアは、自分が生まれたことで母親が死んでしまったことを後悔していました。母親が死ぬくらいなら自分は生まれてくるべきではなかったと。

なので、アリアははるかが子を身籠っていると知った時、堕ろそうとします。

ですがはるかの気持ちを知り、望まれて生まれてきたという自分を受け入れたわけですね。

はるかの相反する2つの感情は、「いつ死んでもいい」と「生きたい」でしょう。自分の生きた証を残すことで解決しました。

アリアの相反する2つの感情は、「母に死んでほしくない」と「生きたい」って感じでしょうか。子が生きていることで自分が生きている証になるという、母の気持ちを知ることで解決です。

実質二人同時攻略ルートなので少しややこしいです。エンディングのシーンもそれに拍車をかけてます。はるかとアリアの正体などについての解釈はまた後に書きます。

ナツユメナギサ、羊

アイドルであった(アイドルじゃなくて歌手だったかも)羊は、ストーカーからの放火で顔に火傷を負い、顔を見たファン達からの心無い言葉で人間不信になってしまいます。

森の奥にある療養所にひきこもっていた羊でしたが、猫につけた盗聴器によって渚の優しさに触れ、大樹に火傷のない体を願い、火傷がなかった頃の状態にしてもらって渚に近づきます。

しかしその魔法は期間限定で、クリスマスに魔法が解け、羊は渚の前からいなくなります。渚は羊をなんとかして見つけ出し、説得を繰り返して連れ戻したのでした。

羊の相反する2つの感情は、「人に受け入れて欲しい」「火傷で醜い顔だから受け入れられない」って感じでしょうか。火傷した顔も渚に受け入れられたことで解決です。

そこまで世界の謎について触れているルートではありませんが、「大樹の魔法」、「療養所に勤める有田というキャラの顔と声」によって色々と察することができるルートでした。エンディングのシーンについてはまた後に書きます。

真樹

ナツユメナギサ、真樹

真樹の正体は、渚がかつて男だと思っていた親友でした。

真樹はそのことを島を離れた時に全て思い出し、自分が渚のことも歩のことも裏切っていることに気付き、渚から離れます。

しかし渚は真樹を探し出します。そして真樹は、例え夢のような時間であってもそれはたしかに存在したものだと、渚と過ごした日々を肯定したのでした。

真樹の相反する2つの感情は、「渚と付き合いたい」と「男同士としての渚の関係もやめたくないし歩を裏切りたくない」といったところでしょうか。たとえ消えてしまう時間であったとしても渚と付き合った日々が存在したと肯定することで解決です。

楽しかった日々の肯定は歩ルートにも繋がってきますね。

ヒロインの問題解決というより、世界の謎に迫るルートだったと思います。

真樹とあのキャラの声が一緒なの途中まで全然気付きませんでした。くやしい。

ナツユメナギサ、歩その一

この世界は、全て歩が見せている夢でした。

歩は恋人の渚の死を受け入れられず、療養所にいる同じ「ロビンソン症候群」の人達や周囲の人達を巻き込み、同じ夢を繰り返していたのでした。

しかし渚は、歩に夢の中ではなく現実の世界で幸せになることを望みます。

歩は、物語開始前に海岸で拾った渚のロケットについていたメッセージから、夢の中ではなく現実で幸福に生きるべきだと理解してはいました。ただ歩はその一歩を踏み出せなかっただけなのです。

ナツユメナギサ、歩その二

だから渚は歩の背中を押します。怪我をして泳ぐのが怖くなったペンギンを歩が優しく海へ連れ出した時のように。

歩の相反する2つの感情は、「現実で幸せになりたい」と「渚のいない現実を受け入れられない」でしょうか。上の方の画像にあった「渚を慕う心」と「渚との出会いを否定する心」は歩が渚に会いに来ない動機なだけですので置いておきましょう。歩が渚と出会わなければ渚は死ななかったと考えていたんでしょうね。「現実で幸せになりたい」と「渚のいない現実を受け入れられない」については、渚に背中を押してもらったこと、幸せと悲しみの上限について、渚との思い出をたまに振り返る、などで解決です。対戦ありがとうございました。

各エンディングについて、ヒロイン達の正体について

先程も書いた通り、登場人物たちの正体は、療養所にいる歩と同じ「ロビンソン症候群」の人達や歩の周囲の人達です。渚は…知らん。渚のロケットの思念体とか概念的な何かとか歩が作り出した何かとかでしょう。

つかさと羊は普通に療養所にいる「ロビンソン症候群」の患者。アリアは有田さん。真樹も物語内で言われている通り。はいいのですが、はるかがちょっと難しいです。というのも、私ははるかは本当に実在する人物なのかちょっと悩んだんですよね。歩でいう渚のように、有田さんが生み出した概念的な何かなんじゃないかと。エピローグは有田さんの幼少期の描写っぽいですし、全ては有田さんのための話だったんじゃないかと思ったんですよね。ですが、それにしてははるかはちょっと我が強すぎるし、なにしろはるかとアリアは全然似てません。なので私の結論は、アリアが偶然はるかに出会い、病弱なはるかに母親と似たものを感じて一緒に行動することにした。なのではるかもつかさと羊と同じく普通に療養所にいる「ロビンソン症候群」の患者でしょう。エンディングのシーンは、夢の世界の話が何らかの理屈で有田さんの過去に干渉した描写か、もしくははるかが夢から覚めて現実で誰かと一緒になってできた子の描写だと思います。

で、羊のエンディングの描写ですが、こちらも夢から覚めて現実で誰かと一緒になったという感じでしょう。はるかも羊も、渚以外の男と一緒になることになりますが、まあそういうものです。夢の中での渚との出来事は、何となく感じる事ができてそれによってちょっとポジティブになれるってくらいなんじゃないでしょうか。

幸せと悲しみの上限について

ナツユメナギサ、歩その三

歩が現実に戻る理由の一つではありますが、私はこの理屈は反対です。

自分のことを不幸だと思っている人は一生不幸ですし、幸福だと思っている人はずっと幸福なんじゃないかと。結局は気の持ちようですね。

私ですか?私は不幸です😊。

まあでも前に進むための原動力としてそう思い込むのは悪くないとは思います。

楽しかった過去を振り返ることについて

ナツユメナギサ、歩その四

こちらも歩が現実に戻る理由の一つです。ちなみに『ナツユメナギサ』では夏は幸福な日々の象徴で冬は現実の象徴だと思います。

ずっと過去に縋るのではなく、辛くなった時に楽しかった過去を思い返して前に進む糧とするくらいがちょうどいいとのことですが、私はこれつい最近同じライターさん(新島夕さん)のゲームで完全に同じ話を聞いたんですよね。

Summer Pockets』です。

Summer Pockets』というタイトルは、「夏の思い出というのは、ポケットにそっとしまってたまに思い返すもの」ということからつけられていたと記憶しています。

スクショ発掘しました。

SummerPocketsテーマ

『ナツユメナギサ』は実質『Summer Pockets』ですね。舞台も同じ夏ですし。

ビターエンドについて

『ナツユメナギサ』は死別エンドです。同じく新島夕さんのゲーム、まあ『恋×シンアイ彼女』と『Summer Pockets』しかオチは知らないんですが、死別とまでは行かなくても全てビターエンドですね。『恋×シンアイ彼女』は離別エンドですし、『Summer Pockets』もギリギリ再会しますが離別エンドみたいなものです。私は好きですが、もうこれ性癖では・・・。秋になったら『キサラギGOLD★STAR』、冬になったら『はつゆきさくら』、『アインシュタインより愛を込めて』もいつかやろうと思っていますし、どれもビターエンドを覚悟してプレイしないといけなさそうです。

小説版の感想を見た感じ渚は生きているっぽいですが、嫌々書いてそうとか言われていたので、それでも今度こそ記憶を取り戻すことはなく歩と一緒になることもなさそうですね。話としては渚と歩は死別か生きていても永遠に会えない方が綺麗ですし。

その他言いたいこと

『ナツユメナギサ』の世界は明らかに現実味がないので、『リトルバスターズ』みたいに誰かの夢の世界だということは初手でわかっていました。ですが、黒幕は歩じゃなく渚だと考えていたんですよね。死んでいるのは歩で、ヒロイン達は歩のペルソナのようなもので、歩の一部であるヒロイン達に触れていきながら歩が死んだことを受け入れるみたいな。そんな事を考えていました。はるかルートをプレイした時に娘のような存在も出てきたので、これは予想的中したな、勝ったな、ガハハ。と思ったのですが、実際は真逆でくやしかったです。はい。

あと、各ヒロインルートの終盤以外の日常描写がおもしろくn…ちょっと退屈でした。ヒロインルートに入ると他のキャラたちがほとんど登場しなくなるのが原因だと思います。つかさとか終盤は久しぶりに出てきてああこんな奴いたなあってなるくらいでした。ヒロインルートは物語が動く終盤以外は読み飛ばして大丈夫だと思います。私はだいぶ読み飛ばしてました。

だいぶ読み飛ばしていたのであまり参考にならないと思いますが、合計プレイ時間は20時間いかないくらいです。正確に計ったわけではないですが、ヒロインルートひとつ2時間半くらい、歩ルートひとつ40分くらいでしたのでそれくらいでしょう。

ああそれとラストのエッッッッシーンは最高に空気読めてないと思います。もうだいたい言いたいこと言い終わって別れる気満々だったのにあの状況からエッッッッするってマジ?真顔でCtrlキーに手を伸ばしました。

総評

意外性あり、考察要素あり、テーマ性ありで、UIなどは少し古いですがいいゲームだと思います。

ですが色々なキャラクター同士の掛け合いが少なくて日常描写が少し退屈なこと、ビターエンドなこと、はるかルートや羊ルートは見方を変えれば寝取られなことで、もしかしたら人を選ぶかもしれません。

点数をつけるなら、キャラ3/5、テーマ4.5/5、展開4.5/5、で80/100くらいでしょうか。羊は結構人気キャラみたいです。私にはよくわかりませんが。

OP曲もすごくいいです。プレイする前は爽やかな曲、プレイして歌詞の意味がわかった後は切ない曲に変わるのもいいですね。


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ヒエッ・・・いつの間にか5870文字・・・。久しぶりに長くなってしまいました。

ほな、また・・・。