宇宙が舞台の短編集です。
タイトルはやたらと有名で、アニメのサブタイトルとかにも使われていたりします。例)エヴァ、人類は衰退しました、エウレカセブン、化物語、戯言シリーズ、神様のメモ帳、スパイラル、etc。
長門有希の100冊にも選ばれているそうです。
先週読んだ、「あなたのための物語」にも名前が出てきていたので読みました。
あらすじ
たったひとつの冴えたやりかた
16歳の誕生日に両親から小型宇宙船をプレゼントされた少女コーティーは、こっそり宇宙船を改造し、両親にも内緒で旅立ってしまう。
宇宙を旅するうちに、シロベーンという脳内寄生体と出会って友だちになり、一緒旅をすることになる。
しかしシロベーンはまだ未熟で、暴走し、コーティーの脳を食い荒らして胞子を飛ばそうとする衝動を抑えられなくなってしまう。
このまま危険な胞子を抱えながら宇宙をさまようことになってしまうことを恐れたコーティーは、「これがたったひとつの冴えたやりかた」と言い、恒星へ飛び込む。
グッドナイト、スイートハーツ
回収救難官のレイヴンは、100歳の年齢だが、冷凍睡眠の影響で肉体的には30歳だった。
ある日、救助した宇宙船で元恋人とそのクローンに出会う。
その宇宙船が襲われ、元恋人かそのクローンかどちらかを助ける選択を迫られるが、自分が犠牲となり二人とも助ける。
なんだかんだでレイヴンも助かるが、その後二人を回収するか、宝の星へ向かうかの選択を迫られ、自由を選択する。
衝突
探索船リフト・ランナーは、ジーロという種族と出会う。
しかし、「暗黒界」に所属するヒューマンがジーロを侵略していたので、ジーロ達はヒューマンを敵視していた。
リフト・ランナーの乗組員達は、何人かの乗組員を犠牲にしながら、偶然が重なることによって戦争を回避する。
感想
テーマについて
テーマは「選択」でしょうか。
選択がテーマの話といえば、「満月をさがして」という少女漫画を思い出します。
ネタバレすると、選択に迷ったらどっちも選んじゃえ☆ミ って話です。
面白いから読んでくれよな。
閑話休題。
全体で考えていい選択なら、自己犠牲も厭わない。
コーティーは胞子が広がるのを防ぐために自己犠牲の選択をしたし、レイヴンも二人を助けるために自己犠牲の選択をし、リフト・ランナーの乗組員達も戦争を回避するために自己犠牲の選択をした。
レイヴンはその後自分の義務をほっぽりだして自由を選びましたが、レイヴンが回収しなくても二人は助かっただろうし、そのほうがレイヴンにとって幸せならば問題ないのでしょう。
3つめのエピソードは、みんなが「たったひとつの冴えたやりかた」の選択をしていった結果、今の平和な世の中があるといった感じでしょう。
あとがきに書いてありましたが、作者のジェイムズ・ティプトリー・Jr.氏も「たったひとつの冴えたやりかた」の選択をしたそうです。
夫婦間の取り決めに沿って、寝たきりの夫を射殺し、その後自殺したそうな。かっけえ...
あれですね。全体を俯瞰して自分よりも全体を優先する選択を迷いなくできる人はかっけえっすね。
「輪るピングドラム」も愛による自己犠牲の話ですし、「たったひとつの冴えたやりかた」で犠牲になった登場人物たちも、輪廻転生後に幸せな人生を送っていることでしょう。
- 作者: ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1987/10/01
- メディア: 文庫
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