唯唯漂うただの海藻

本やゲームなどの感想とか好きなことを書いていく。

「マブラヴ オルタネイティヴ」感想-探そう己の立脚点-

マブラヴオルタネイティヴタイトル画面

アニメも始まったということで、『マブラヴ』と『マブラヴオルタネイティヴ』をプレイしました。

二つ合わせて一つの作品に感じますし、一つの記事でまとめます。

 

ストーリー

もう15年以上前のゲームですし、最初からネタバレ全開でいきますのであしからず。

ストーリーは3つのパートに大きく別れています。

普通の学園モノである「EXTRA編」、EXTRA編でぬくぬくと生きていた主人公がBETAという地球外生物と戦争中の並行世界へ放り出されてその世界で生きることとなる「UNLIMITED編」、UNLIMITED編で地球を守れなかった主人公がUNLIMITED編の最初からやり直すこととなる「ALTERNATIVE編」、この3つですね。

大きく分けて、2つのストーリーから成り立っている。EXTRA編は柊学園3年生の白銀武と、幼馴染の「鑑純夏」、突然転がり込んできた「御剣冥夜」、個性的なクラスメイトなどとの学園ドタバタコメディー。UNLIMITED編ではある日、目が覚めると価値観の大きく異なる世界に放り出された白銀武が、その世界での生活を描くもう一つの物語。

最初から両方をプレイすることは出来ず、EXTRA編で特定条件を満たすことにより、UNLIMITED編をプレイすることが出来るようになる。発売日以前はEXTRA編の内容のみが告知され、UNLIMITED編の存在は伏せられていた。更にUNLIMITED編は、2006年に発売となった続編『マブラヴ オルタネイティヴ』へ多くの謎が持ち越される結末となっている。

引用元:Wikipedia

探そう己の立脚点

流されるだけでは生きていけない

アンリミテッド編冒頭

主人公である「白銀武」は突然平和な世界から戦争中の世界へ飛ばされ、価値観の違いに戸惑います。

EXTRA編のような平和な世の中では状況に身を任せているだけでも誰にも迷惑かけることなく生きていけましたが、UNLIMITED編の世界ではそうはいきません。

武はUNLIMITED編の世界では国連軍に入って訓練兵として生活することとなりますが、最初のうちは仲間たちの足を引っ張りまくります。そうやって仲間たちに助けられているうちに、観光気分で生活していた自分が恥ずかしくなり、自分も誰かの役に立てる存在になりたいと考えるようになります。

戦術機に乗るようになった後は足を引っ張ることはなくなりますが、周囲との意識の違いを気にするようになります。

アンリミテッド編冥夜

左上の青いのはプレイ時間測るタイマーが写っているだけなので気にしないでください

周囲の仲間たちはみな、なにかのために戦っており、自らの意志を持っています。しかし武にはそれがありません。

そうこう過ごしているうちに地球を放棄することが決定され、武は自分はもっと他にできることがあったんじゃないかと後悔しながら終わることになります。

目標や使命感だけでは足りない

記憶を引き継いで最初からやり直すこととなった武は前回の反省を活かして地球を救うために奔走します。

その甲斐あって前回よりも早く訓練期間を終えたり陰謀を未然に防いだりしますが、ある日クーデターが起こります。

BETAに殺られるか殺られないかの瀬戸際なのに人間同士で争っている場合かよと憤る武ですが、そんな武に月詠は生きていればそれでいいというわけではないと言います。

納得しない武に様々な例え話を月詠が語ると、武は言い返すことができなくなりました。

オルタネイティヴ編クーデター前

そしてクーデター鎮圧作戦中、武は日本帝国の征夷大将軍の悠陽と出会い、護送することになります。護送中、乗物酔いになった悠陽に酔い止め薬を飲ませろと命令を受けますが、武は悠陽に万が一のことがあったらと考えてしまい、飲ませることが出来ませんでした。

オルタネイティヴ編悠陽

作戦のことを考えれば薬を飲ませるのが最適解だったはずですし、武もそう思っていました。なのに武ができなかったのは、自分の行動に責任を取れるほどの信念や覚悟がなかったからです。

その後悠陽と話し、武は自分は日本人だという「立脚点」を見つけます。

自らの指標を一つ見つけた武は、行動することから逃げるのをやめ、任務に志願するのでした。

f:id:hijikichi:20211103052750j:plain

公の立場だけでは戦えない

少し吹っ切ることができた武ですが、いざBETAと戦うとなったとき、周りを見ず武器も持たず一人で突っ込んで惨めにやられてしまいます。

そして落ち込んで慰められているところをBETAに襲われ、仲間がひとり殺されてしまいます。

自分のせいで死んだと自分を責めた武は、平行世界へ逃避しますが、そこでもまた自分のせいで人が死んでしまいます。

武は自分のせいで死んでしまった人達を助けるため、元の世界へ戻って戦う決意をします。

クーデター時に武が見つけた「日本人」という立脚点は、言うならば公の立場みたいなものです。

一つの指標にはなりますが、これだけだと一人の人間が戦う理由としては弱いんですよね。

散々痛めつけられ戦いから逃げようとした武ですが、武は自分の周囲の人達を助けるため、守るためという極個人的な目的によって戦いに復帰することが出来ました。立脚点二個目ですね。

f:id:hijikichi:20211103062103j:plain

大きな理由と身近な理由、これら二つの立脚点が戦うため、信念や意志を貫くために必要なものでした。

武はこれら二つの立脚点によって自己を確立しました。

自己の成長

f:id:hijikichi:20211103154110j:plain

二つの立脚点によって自己を確立した武ですが、これで終わりではありません。

今の立脚点をもってしても出来ないことがあったり、目的達成や失敗などで立脚点がなくなることもあるかもしれません。

しかし一度立脚点を手に入れて行動して責任を受け入れてきた人間ならば、失敗や他の信念を受け入れ己の糧とし成長することも、また新しい立脚点を見つけることもできるでしょう。

オリジナルハイヴ戦最後、武は冥夜もろともオリジナルハイヴを撃たなければならなくなった時、めちゃくちゃ躊躇します。悠陽に酔い止め薬を飲ませなければならなかったシーンの再現ですね。

f:id:hijikichi:20211103161322j:plain

散々迷った挙げ句撃ったので、武ほとんど成長してへんやんけと思われた方もいると思います。(というかオリジナルハイヴ先輩めっちゃ空気読んで話し終わるの待ってくれてるやんけもうこれ人類は知的生命体だと認めてるやろ・・・)

しかしこれは小さいですが確かな成長です。人はそうして少しずつ成長していくものなのではないでしょうか。

マブラヴというタイトルの意味

直訳するとマブ(本物の)+ラヴ(愛)で「本物の愛」です。

武がループから脱出する鍵は、純夏を見つけることでした。純夏が無意識のうちに嫉妬し、武が他の女とくっついてしまった世界を片っ端から消していたんですね。

それに気付いた純夏は、世界を他のヒロインが武の側にいない世界に作り変えることも出来たのに、全てのヒロインが武とくっつく可能性のある世界に作り変えます。EXTRA編に存在しなかった二人のヒロインまでも追加された世界です。

f:id:hijikichi:20211103164306j:plain

マブラヴ(本物の愛)とは、色々な選択がある中で、立脚点や信念、意志により、他の人を選ばなかったという責任も受け入れ、ただ一人の人を選ぶということなんじゃないでしょうか。

そう考えればEXTRA編もまた違った見方ができるかもしれませんね。

f:id:hijikichi:20211103170153j:plain

感想

間違いなく名作です。

EXTRA編が聞いていた以上につまらn進めるのに時間がかかったときはどうしようかと思いましたが、おそらくEXTRA編はALTERNATIVE編をベースに作られているので、ALTERNATIVE編クリア後にやると色々と発見があって面白いと思います。色々と出来事がリンクしていたりするので比較してみると面白いです。

一周目のEXTRA編はぶっちゃけ読み飛ばしていいんじゃないでしょうか。私は序盤の数時間と純夏ルートラスト以外は全部読み飛ばして後はこのサイトを見て補完しました。

seesaawiki.jp

UNLIMITED編からは間違いなく面白いので、EXTRA編がきつい方はこんな感じで軽く流しちゃっていいと思います。

ちなみに私のプレイ時間はEXTRA編5時間40分、UNLIMITED編6時間50分、ALTERNATIVE編21時間半です。合計で34時間くらいですね。

製作者インタビューでもEXTRA編は死ぬほど低いテンションで作ったと書いてありますし、そりゃまともにやったら面白いわけがないです。EXTRA編を真面目にプレイするのはALTERNATIVE編の後でもいいと思います。

www.4gamer.net

EXTRA編は各ヒロインのルートや選択肢がありますが、UNLIMITED編とALTERNATIVE編はほぼ一本道です。なので終わってみると純夏と冥夜以外のヒロインは影が薄かった印象を受けました。

一応各ヒロインも武のように自己の確立までの流れがあります。私は冥夜の選択肢しか見ておらず自信がないので詳しくは書きませんが。

f:id:hijikichi:20211103195222j:plain

先ほど貼ったインタビュー記事によると、マブラヴエヴァへの回答らしいです。

BETAにやられて別世界へ逃げ込んだ武が旧エヴァラストで自意識へ逃げ込んだシンジくんって感じですかね。

自分がしでかしたことの責任を取るため、自分のせいで死んでしまった人を救うため、戦いに復帰します。下手したらシンジくんよりも酷い目にあってますね。

私だったらあのまま皆に忘れられて消えるのを受け入れると思います。武ちゃんはえらい。

シン・エヴァを見た後だと、当たらずも遠からずってところでしょうか。『マブラヴ』が「意志」について描いていたのに対し、『エヴァ』は最後まで「他者との関わり」について描いていた気がします。エヴァ警察が怖いのでエヴァに関してはここでは何も言いませんが。

EXTRA編はあれでしたが、UNLIMITED編からは熱い展開が続いてずっとやっていられました。テーマ性もありで、製作者の熱意も伝わってくるとてもいい作品だったと思います。プレイ時間もそこまでかからないので敷居もそんなに高くないはずです。私はバルドスカイレベルで時間かかるゲームだと思っていて後回しにしていたのでもっと早くプレイしておけばよかったです。

エッッッシーンとグロシーンはそこまで多くありませんので全年齢版やコンシューマ版でも問題ないと思います。(オルタネイティヴに関してはなんとエッッッシーン2個w)

今放送中のアニメもちょくちょく見ていますが、あれはものすごく展開が早いですね。あれでは原作やってない人は理解出来ないんじゃないでしょうか。戦闘シーンを早くやりたいから序盤の展開が早いんだろうなとは思いますが、欲を言えばEXTRA編を6話UNLIMITED編を6話ALTERNATIVE編を24話の合計3クールでもう少し丁寧にやってほしかったですね・・・。