唯唯漂うただの海藻

本やゲームなどの感想とか好きなことを書いていく。

「彼女たちの流儀」感想・評価-人はそんなすぐには変われないんよ-

かのぎタイトル画面

「中学生」というものは、子供でも大人でもない微妙な年頃です。

身体も心も子供から大人へ切り替わるちょうど節目の年齢なのではないでしょうか。

これは未だに覚えている出来事なのですが、私が某中学の合格発表で合格してそのまま資料を受け取りに行った時のことです。資料を親が受け取ろうとしたのですが、受付の先生は「君はもうすぐ中学生で大人なんやから君が受け取らなあかんで」と私に渡してきたんですね。わかりましたと受け取りましたが、小学生時代はだいたいのことは親がやっていたので、なかなかショッキングな出来事だった覚えがあります。

行動や責任といったことだけではなく、将来のことや性についてのことなど、小学生時代にはなかった悩みが中学生になると増えていきます。

そういった環境から、中学生になるとどうしても変化を強いられてしまうんですね。

彼女たちの流儀』の主要キャラクターたちはほぼ全員中学生で(いや登場人物全員18歳以上だけど)、「そういった変化にどう対応するか」が主題になってきます。まさに彼女たちの流儀ですね。

 

あらすじ

真面目に書くと長くなりそうなのでWikipedia貼っときます。

ja.wikipedia.org

母親が亡くなったのをきっかけに姉のいる生家に戻ったら冷たくされたわ・・・って冒頭ですね。

感想

秋名涼月

秋名涼月と人形

永遠に憧れる少女の話。

涼月は兄に襲われた経験から、大人になることは汚れていくことだと思っており、綺麗なままでいたいと永遠に憧れるようになりました。

そういった涼月の流儀は、「自分の思った通りにする」です。涼月は自分に正直で、自分が望むようにあるためには、その命すら投げ出してしまいます。

しかし死の直前、主人公の胡太郎に助けられます。死という選択肢を奪われた涼月は生きていくしかなくなってしまいました。

涼月ルート内で中学生の期間のことを夕焼けに例えられます。夕焼けは昼と夜の境目でとても綺麗ですが、その夕焼けというものも、少しずつ色が変わっていき、一秒たりとも同じ色にはならないと。

涼月ルートラスト、涼月はあれだけ嫌っていた胡太郎のことを世界で3番目に嫌いじゃないと評します。

これは確かな変化です。これから涼月も夕焼けのように少しずつ変わっていくのでしょう。

涼月ルートラスト

由希せせり

せせりの告白

いつも明るく見えるせせりですが、嫌なことや悩みがあっても表に出さず隠してしまい無理をしてしまうことがあります。

それを胡太郎に見抜かれ、せせりは素直な気持ちを打ち明けるようになります。

せせりの流儀は、「無理をして明るくする→素直な気持ちを言う」でしょう。

せせりルートラスト、胡太郎はせせりに私のことを好きですかと聞かれて、わからないと答えます。

これはどちらかといえば好き寄りのわからないです。胡太郎は確かにせせりに惹かれていっています。

素直な気持ちを言い続けていれば思いは伝わるといったルートだったと思います。

せせりルートラスト

花葉千佐都

千佐都と鳥羽莉

千佐都の流儀はとてもシンプルです。

「勝負する」ですね。

千佐都は、自分より何でも出来てしまう鳥羽莉に劣等感を抱えており、胡太郎を手に入れるために鳥羽莉に勝負を持ちかけます。

千佐都は刻一刻と変わっていく変化に勝負して適応する強さを持っています。

千佐都ルート内で胡太郎と鳥羽莉と千佐都の三人の関係を三角形で例えられていました。千佐都は鳥羽莉だけがこの三角形の中からいなくなってしまったと言っていたと思いますが、胡太郎は千佐都だけがどんどん変わっていっていて胡太郎と鳥羽莉は変化しないでいると言います。

千佐都のような強さは誰もが持っているものではないんですね。ちょっと胡太郎と鳥羽莉が千佐都に付いていけてないと感じたルートでもありました。

千佐都ルートラスト

白銀朱音

朱音の告白

鳥羽莉とは双子の姉である朱音。

朱音は鳥羽莉のことを好きであるがゆえに、鳥羽莉と同じものを好きになり、同じことをやろうとします。

ところが胡太郎という鳥羽莉の大切なものに手を出したことにより、鳥羽莉と喧嘩してしまいます。しかし朱音は、鳥羽莉の真似をしているうちに本当に胡太郎のことを好きになってしまっていました。譲れないものを手にした朱音は、鳥羽莉の真似ではなく自らの意思で胡太郎を手に入れようとします。

朱音の流儀は「真似をする(演じる)→自らの意思で行動する」でしょう。

朱音ルートラスト

それにしてもこのおねーちゃん命令だよってセリフかわいすぎませんか。

このセリフで鳥羽莉も救われてそう。

おねーちゃん命令

弓曳火乃香

火乃香の流儀

白銀家のメイドである火乃香ですが、ある日胡太郎のことを好きになってしまい、自らの立場を考え、屋敷から離れてしまいます。

プロとしての矜持の問題とか大層なこと言ってはいますが、実はこれはただの逃亡です。

胡太郎に居場所を突き止められ、朱音に説教された火乃香は、自分に正直になることに決めました。

火乃香の流儀は「逃亡する→自分に正直になる」でしょうか。

あんまり書くことなくて短くなりましたけどこのルートは白銀家の背景とかがメインなので気にしない気にしない。

火乃香ルートラスト

白銀 鳥羽莉

鳥羽莉と再開

ラスボスです。ルート感想に入る前に、まずはOP曲を聞いてください。


www.youtube.com

鳥羽莉の感情がそのまま歌詞になっています。

・・・それにしても神曲すぎる。イントロとCメロ気持ち良すぎるんじゃあぁ^~

これは自分語りになりますが、ニコニコ動画のランキングでエロゲOP集を見つけ、この曲を聴いたのがエロゲを始めたきっかけの一つでもあります。初めて聴いて、エロゲ曲すげえええってなりました。私の一番好きなエロゲ曲であり、この曲がなければエロゲ始めてなかったかもしれません。さすがにそれはないかな・・・。

閑話休題

ラスボスというだけのこともあり、今までのヒロイン全ての問題を彼女も抱えています。自分に正直になれないし、逃亡するし、命を投げ出そうとするし・・・。

さて、鳥羽莉というキャラクターはなかなか業が深い人物です。

幼い頃に弟(胡太郎)に性的ないたずらをしようとしたところを母親に見つかって殺されかけたり、父親の血を吸いすぎて殺してしまったり。

そういった過去の出来事からか、人に本心をほとんど見せることのない、かなり臆病なキャラクターとなっています。

鳥羽莉は吸血鬼として人を傷つけないと生きていけない自分が嫌いです。そして不老なので、片方だけが歳を取り、身体と気持ちが離れていくことに怯えています。

そういった理由から、胡太郎に興味のない自分を演じ、本当は愛しているのに胡太郎と距離を取っていたんですね。

永遠に愛し合うことが出来ないのであれば、最初から愛し合わないほうがマシだということです。

しかし胡太郎は、一瞬が持つ輝きや価値が、永遠に勝る事はきっとあると言います。

鳥羽莉ルート劇中

一瞬が持つ輝きや価値、それさえあれば、永遠の中でだって生きていける。

そうして鳥羽莉と胡太郎は結ばれた・・・はずでした。

しかしメンタルよわよわな鳥羽莉はそれだけでは救われません。

鳥羽莉と胡太郎電話シーン

胡太郎との思い出が増えていけば増えるほど、失う怖さも増していきます。次に胡太郎に会ったときにはそれに耐えきれず殺してしまうだろうと確信するほどです。

何かが変わってしまう、失ってしまう恐怖。生きている限りはそれと戦っていかなくてはなりません。鳥羽莉は永遠にそれと戦っていくことを宿命づけられています。

失うのが怖ければ大事なものなんて全部捨て去ればいい。ついには鳥羽莉は自殺を図ります。

フラクタルの吸血鬼

そこでフラクタルの吸血鬼とかいう謎の存在と出会います。

それは鳥羽莉がやろうとしたように、全てを捨て去った吸血鬼達の集合体みたいなものでした。

それは究極のひきこもり。大事なものを失う恐怖から逃れた彼らですが、そこには寂しさだけが残っていました。

鳥羽莉に与えられた選択肢は2つです。変わってしまう、失ってしまう恐怖と永遠に戦うこと。もしくは、全てから逃れて永遠に寂しいことです。

しかし鳥羽莉が選んだのは、どちらでもない第三の道でした。

・・・しばらく時間をください。そうして鳥羽莉はみんなから自分の記憶を消しました。

そして15年後、ついに鳥羽莉は胡太郎に会いに行きます。

「……戦うことは、つらいよ」

「でも、できないことじゃないって、思えるようになったから」

「今度は、少しだけ強くなったと思う」

「変われなくたって、やってやるって、決めたんだ」

「……私、多分まだ大人じゃない」

「5年と、15年分の想いだよ」

姉さんはずっと子供のままで――だけど、これからゆっくりと大人になるのかもしれない。

――あなたが好き、だよ、胡太郎。

鳥羽莉ルートラスト

15年の時間をかけ、少し強くなった鳥羽莉はやっと胡太郎に告白します。

・・・鳥羽莉ルートラストが心に残るのは、誰もがみんな同じような悩みを抱えているからではないでしょうか。

年齢的にはとっくに大人になった私も、何かが変わってしまったり、失ってしまうことが怖いし、全てを捨て去って寂しくなるのも嫌です。かと言って、戦い続けているかと言われても全然そんなことはなく、どちらかと言えば逃げ続けています。というか実際逃げて10年近くひきこもりしてましたし。だから鳥羽莉が戦う覚悟が出来るまで15年かかったというのはすごく納得がいくんですよね。誰もが変化と戦っていけるくらいすぐに強くなれるわけじゃないんじゃい!😡

鳥羽莉のように年齢は重ねていてもまだ大人になれていない人、結構いるのではないでしょうか。

鳥羽莉の流儀について言及するのを忘れていました。「演じる→自分のペースで強くなる」って感じですかね。

兎月胡太郎

裏ボスです。

全エンディング後に到達する、月の箱庭ルートは実質鳥羽莉が胡太郎を攻略するルートです。

もうここまで書くのに疲れているのでざっくりした感想で許してください。

というかぶっちゃけ考察不足です。正直このルートのことよくわかっていません!(爆)

『紙の上の魔法使い』のときもそうだったよな。毎回最後で力尽きるんよ・・・。

なのでここから先はかなりの推測で書きます。

胡太郎は5年間母親に束縛されて暮らし、自分がこれからどうしたいかもわからずにいました。生家に帰ってきても、姉達は何を考えているのかわからないし何が本当で何が嘘なのかわからない。胡太郎には確かなものがなにもないんです。

だから胡太郎はどのルートでもヒロイン達に本当の気持ちを言葉にすることを求めます。逆に言えば、逃げずに本当の気持ちを言葉にさえできれば胡太郎は攻略できるんですよ。ちょろい男です。

ですが、嘘は悪いことなのでしょうか。

月の箱庭ルートはかなり都合が良くて嘘っぽいルートです。

しかし鳥羽莉は、本当も嘘もそれを決めるのは私達の気持ち次第だと言います。

「感単(ここ誤字ってますよ130cmさん・・・)に思い通りになる世界なんて、きっと嘘だわ」

そしてこの世界には、きっと本当のことは何もない。

本当も、嘘も、それを決めるのは私たちの気持ちに過ぎないんだ。

嘘でもなんでもいい。

胡太郎がそばに居てくれたら、それが真実。

「鳥羽莉って、嘘つきだよね」

「今さらそんな事に気づいても、遅いのよ?」

私の世界は、やさしい嘘に満ちているのだ。

胡太郎のために自分を演じていた鳥羽莉だからこその言葉の重みがありますね。

胡太郎だけでなく鳥羽莉も、変化することや失うことを恐れ、ずっと確かなものを求めていました。

しかし、確かなものなんてもともとなにもありません。であれば、自分に都合の良いものが本当、都合の悪いものが嘘でいいんじゃないでしょうか。

気持ちが変化しているんじゃないかといちいち疑ってかかるよりも、そうやってプラスで捉えたほうがお得ですよね。そうなればそれはきっと確かなものであり、永遠です。

お互いそう思っていればこの永遠は変わることはないでしょう。

鳥羽莉と胡太郎は最後に永遠に確かなものを手に入れたのかもしれませんね。

月の箱庭ラスト

雑感

いかがだったでしょうか?久しぶりに本気を出してしまいました。

いや先月の9nineもユースティアも本気のつもりだったんですよ。それにしては反響もアクセス数もなくて泣きたくなりますけど。

さて、OP曲が好きすぎてプレイした今作ですが、正直一周目はそこまででした。

変化や永遠についての話なのは冒頭で確信したものの、涼月ルートでは期待通りの話だったのが、せせりルートであまりのルートの短さという手抜きっぷりに意味がわからなくなり、千佐都と朱音でちょっとだけ持ち直したものの、火乃香ルートでまたわけがわからなくなり、鳥羽莉ルートと月の箱庭ルートはちょうど金曜ロードショーの竜とそばかすの姫とかいうクソ映画(ワイ映画館まで見に行ったんやぞ金と時間返せ)を見ながらプレイしていてあんまり集中できずで結局最後までよくわからない感じで終わってしまいました。

で、数週間たまーにこのゲームのことを思い出し、やっぱり変化や永遠についての話で合ってたよなと確信して、どうせ10時間くらいで終わるからと2周目をプレイしました。

そうすると一周目と違ってどのルートも面白い面白い。鳥羽莉ルート以外は1ルート1時間とかかりませんが、短いながらも彼女たちの流儀についてしっかり描かれていました。まあやっぱりせせりと火乃香はちゃんと描かれていたか怪しいところですが・・・。

特に鳥羽莉ルートがよかったですね。戦うことからも捨てることからも逃亡して戦えるようになるまで十年以上かかるとか共感しかない。誰もが変化と戦っていけるくらいすぐに強くなれるわけじゃないんじゃい!😡(二回目)

プレイしてよかったと思いました。

評価

最後に評価を。もうこれめんどいんでやめていいですかね?

今回の配点は、テーマ25、シナリオ25、キャラクター20、読後感20、その他10です。

・テーマ

23/25

変化を強いられる年頃のキャラクター達を使って変化や永遠について描いたのはお見事。ただちょっと?いやかなり手を抜きすぎて伝わってきづらかったルートがいくつかあったのが残念です。

・シナリオ

20/25

涼月ルートと鳥羽莉ルートは文学的でかなり好き。せせり、千佐都、火乃香はもうちょっとなんとかなったやろ感。火乃香とかなんで胡太郎のこと好きになったのかわからないんですが。千佐都のこの周囲を置いてきぼりな感じは意図的かもしれない。誰もが千佐都みたいに勝負し続けられるほど強くないんすわあ。

・キャラクター

15/20

印象に残ったのは鳥羽莉、涼月、朱音。あとの三人は知らん。

・読後感

17/20

鳥羽莉のように自分のペースで少しずつ大人になっていこうと思いましたまる

・その他

8/10

主人公に声がある+5、主人公以外の男キャラが声なし-5、OP曲が神すぎる+5億10、システムがあまりにも古すぎる-2、エッッッッッシーン中で重要なことを言う-5億

音声継続やらジャンプやら便利な機能は大体ありません。フォント変更でみんな大好きふい字フォントが使えたりしますが雰囲気と合っていないので非推奨です。

あとエッッッッッシーン中で何度か重要なことを言っていた気がします。私は基本飛ばしまくっているので、ほとんど気づいていないです。マジでやめてくれ。

総評

83/100

あまりにもなボリュームの少なさ、一部ヒロインの手抜きが足を引っ張っています。

最初から鳥羽莉だけが目的でしたら充分満足な内容です。

エッッッッッシーンは、なんだかんだで変化を求めているヒロインが多いので、ヒロイン主導のシーンが多いです。

なので、

・精神的に大人になれていないと感じている人

・確かなものが欲しい人

・攻略するよりもされたい人

・Red-reduction division-という神曲についてさらに理解を深めたい人

・少し昔のゲームをプレイしてノスタルジーに浸りたい人

このような人達におすすめのゲームです。

 

これからポケモンで忙しくなりますので、しばらくはエッッッッッゲ感想記事なくなると思います。誠にごめんなさい。いや逆に厳選のお供としてプレイ時間増えるかも?何にしても2ヶ月くらいはないと思います。

Red-reduction division-はYouTubeの再生リストに入れて毎日聴いてください。

ほな、また・・・