唯唯漂うただの海藻

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「9-nine-」感想・評価-人生に真剣に向き合うためには-

nineタイトル画面

さとり世代(さとりせだい)とは世代の一つ。一般的に「欲がない」と言われている世代を指す。
「さとり世代」の特徴は「欲が無い」「恋愛に興味が無い」「車に興味がない」「旅行に行かない」といったことなどが典型例として指摘される。休日は自宅で過ごしていることが多く、「無駄遣いをしない」し「気の合わない人とは付き合わない」傾向が高い。 

引用元:Wikipedia

さて、なんでウィキペディアのさとり世代についての引用を初手に持ってきたのかというと、このゲームはさとり世代の人へ向けたゲームだと感じたからです。

「欲が無い」「無駄遣いをしない」「気の合わない人とは付き合わない」。まさにこのゲームの主要キャラクターたちの特徴ではないかと思いませんか?

主人公の翔やヒロインの春風や希亜、それとサブキャラの蓮也は友達がほとんどいませんし、ヒロインの都は社長令嬢なのに何故か倹約家です。

なんていうか、現状から一歩引いているようなキャラクターが多くて、そういったキャラクターたちが自分の気持ちを正直を出せるようになるまでの話が多かった印象ですね。

 

あらすじ

ちょうどいい動画が公式にあるのでそっちを見てください。


www.youtube.com

ナレーションの天ちゃんかわいいですね(^ω)^

まあ簡単に言うと、普通の高校生の翔が、持っていると能力を使えるアイテム”アーティファクト”によって引き起こされる騒動に巻き込まれていく話です。

感想

例によって多少のネタバレを含みますので見たくない方は評価の項目まで飛んでください。

ここのつここのかここのいろ(九條 都)

九條都エンド

この章のヒロインである九條都は、責任感が強くてしっかり者なキャラクターですが、何故か自己評価が低くて引っ込み思案で、いざという時に自分の思ったように行動できないふしがありました。

妹のために躊躇なく炎の中へ飛び込む翔を見て、自分もしっかりと行動できるようになりたいとバッドエンドでは一人で石化事件の犯人を追いますが、返り討ちにあってしまいます。

グッドエンドでは、めでたく翔と都は付き合うこととなり、二人で石化事件の犯人を追うことになります。石化事件の犯人と思わしき人物はすでに死亡していましたが、とにかく二人で石化事件を解決することができました。

シンプルに、「一人では無理なことでも二人なら乗り越えられる!」って話だったと思います。

ですが、気になった点が一つあります。都が謎に自己評価が低い理由が私にはよくわからないんですよね。正義感を振りかざして失敗した過去とかがあれば理解できたんですがそういった描写はなかったように思います。もしあったらコメント欄などで教えてください。

そしてプレイ時間が4時間程度と短い!有料体験版と言われている理由がわかりました。

そらいろそらうたそらのおと(新海 天)

新海天エンド

この章のヒロインである新海天は、誰にも言えないとある大きな秘密を抱えています。

実兄である翔に対して恋愛感情を持っているという秘密です。

そんなある日、敵に襲われている翔を自身の”対象の存在感を消す”という能力を使って助けた天ですが、無茶をしすぎて能力が暴走してしまいます。

能力が暴走して自分の存在を維持できなくなった天は、ついに翔に告白します。告白を無理に受け入れるのがバッドエンドルートで、いったん受け入れないのがトゥルーエンドルートです。

バッドエンドは何が駄目だったのでしょうか。それは翔が天と同じ想いを共有していないのに無理して受け入れたことでしょう。

この章のテーマは「同じ想いを共有すればどんな辛いことも乗り越えられる!」だと思います。

翔は人殺しという手段を取って石化事件の犯人から逃げ延びますが、その事を気に病みPTSDみたいな症状に陥ってしまいます。それを天に打ち明け想いを共有することで楽になるんですよね。

天は可愛かったし面白かったのですが、例によって不満点が数点あります。

天が翔に惚れた理由と、18禁版じゃないからトゥルーエンドではどこで二人が結ばれたのかよく分かんねえ・・・ってことです。

幼い頃人見知りでずっと助けてもらったからって理由じゃ大きくなっても好きでい続ける理由としては弱いと思います。私にも妹がいますが、近親ってそれくらい敷居が高いですよ。都ルートと同じく、描写不足を感じました。

あと、天との叡智シーンは聞いてるだけで面白そうなので18禁版をやったほうがよかったととても後悔しました。紙袋で顔隠して致そうとするとか面白すぎでしょ・・・。

はるいろはるこいはるのかぜ(香坂 春風)

香坂春風エンド

この章のヒロインである香坂春風は、小学生の時に男子にいじめられた過去があり、気が小さくて言いたいことが言えず、妄想ばかりしているオタク少女です。こう書いてみるとキャラ濃いな・・・。あと空気が読めなかったり料理が下手だったりとかもあって春風は個性が強いですね。

春風は、困ったら妄想で作り出したもう一人の自分に任せて逃げていたのですが、翔がピンチになり、自分の意志をはっきりさせ行動することができるようになります。翔もまた、憎しみに身を任せ人を殺しそうになりますが、あと一歩のところで踏みとどまります。

春風が意思表示できるようになったのも、翔が踏みとどまったのも、仲間の影響が大きかったと思います。なのでこの章のテーマは「誰かと肯定し合って自分を見失わないこと」なのかなと思いました。

さっきまで文句言っていた描写不足ですが、この章では感じませんでした。春風というキャラクターがよく描けていて魅力も出ていたと思います(何様や)。話もかなり動き、おもしろい章だったと思います。

ゆきいろゆきはなゆきのあと前半(結城 希亜)

希亜エンド

この章のヒロインである結城希亜は、過去のトラウマから理想の自分でいることに縛られて本当の自分を出せないキャラクターです。

翔は、唯一黒幕を倒すことができる能力を持つ希亜が能力を発揮できるようにするため、トラウマを乗り越える手助けをしていきます。希亜は翔に出会ったときから恋しており、翔の前では理想の自分を忘れ、本当の自分を出せるのでした。この章のテーマは、「気を許せる仲間の存在が過去を絶ち前に進む原動力になる」でしょうか。

ゆきいろゆきはなゆきのあと後半(新海 翔 深沢 与一)

9nine最終決戦

主人公である新海翔は、”オーバードライブ”という、能力を最大限まで引き出し使いこなす能力を持っており、仲間たちの能力を使って、仲間たちのために戦います。対して深沢与一は、人を殺して人から奪った能力を使い、自分のために戦います。

この決戦は"誰かのために誰かと協力して力を合わせるという絆"VS"自分のために自分一人で戦うというサイコパス"の対立構造になっていて、まさに最終決戦にふさわしい対決になっています。テーマは「絆の強さ」でしょう。一章である"ここのつここのかここのいろ"から『9-nine-』というゲームはひたすら、一人でいることを否定し、誰かと一緒にいることを肯定していました。だからワイら陰の者もちゃんと友達作れよ!な!

正直ここの決戦というか与一が印象に残りすぎて前半の希亜の印象が薄くなりました。

というか、テーマといい最終決戦といい、すごく少年漫画的ですよね『9-nine-』って。

あとヒロインたちを召喚できた理由、全年齢版だとわかりづらくて調べました。体液の接種(意味深)。

新章(9)

新章ラスト

最後の最後に名前呼んでくるのずるいわ。

9・・・というか「私」の能力は過去現在未来を見通す力でした。過去現在未来を見通す力・・・というより、翔たちを選択によってよりよい結末へ導く力、って感じでしょうか。

「選択」ってなんでしょうか?みなさんはノベルゲームをやるときどんな事を考えて選択肢を選んでいますか?ちゃんと考えて選んでいますか?テキトーに選んでいますか?攻略サイトを見て選んでいますか?私は攻略サイト見てます(爆)。なんにせよ、自分とは無関係な話ですし、どこか無責任な気持ちで選んでいると思います。

自分の人生についてもそうな人いるんじゃないでしょうか。自分の人生になんだか真剣になれず、無難な選択ばかりしたり、やりたいことや欲しい物があってもどうせ無理だと諦めたり。まさにさとり世代ですね。私もそうです。

新章都

都は、全てを知り、自分がしてしまったことの責任も全て受け入れ、エゴに従いました。「正しく選択する」ということは、知れることは知り、選択することで生じる責任も理解し、それでも自分がしたいと思うことを選ぶことなのではないでしょうか。

そういったエゴの作り方や、生じる責任などの解消方法はこれまでのルートで書いてきた通り、他者との絆が鍵でしょう。どんな夢だって誰かと力を合わせれば達成できるし(ここのつここのかここのいろ)、どんなつらいことだって誰かと一緒なら乗り越えられるし(そらいろそらうたそらのおと)、自分が本当に何をしたいかも誰かと一緒にいればわかりますし(はるいろはるこいはるのかぜ)、誰かと一緒なら前へ進むことができる(ゆきいろゆきはなゆきのあと)。ここまでお膳立てされれば人生に真剣に向き合って正しく選択することも可能でしょう。

だから私は最初に言ったのです。「このゲームはさとり世代の人へ向けたゲームだ」と。どこか真剣になれない人が、真剣になるまでの話なんですね。

だから翔は私達「9」と最後決別します。翔はもう絆を知り、正しく選択することを知ったので、私達の能力「オーバーロード」は必要ないんですね。

次は私達「9」の番です。いっそ真剣に生きてみようじゃあありませんか!

評価

今回の配点は、テーマ15、シナリオ25、キャラクター30、読後感20、その他10です。

・テーマ

10/15

正直読んでる時はここまで理解してなかったです。しょうがないので全キャラクターと全シナリオと能力など全部メモ帳に書き出し、20分ほどうんうんうなったところでやーっとテーマが見えてきました。

読んでるときにテーマが見えてこないので、ストーリーが薄っぺらく感じたんですよね。キャラクターが食材、シナリオが調理法、テーマが味付けみたいなものなので。

重要なことがさらっと流されることが多く、かなり気づきにくいテーマだと思います。合ってるかどうかもわかりません。最終決戦でも問答がほとんどありませんでしたしね。

某批評空間に、『9-nine-』はテーマがないゲームだと書いてありましたが、そんなことはありません。プロが作った話ならどんな話でもテーマはあるはずです。味付けのない料理を出すシェフがいますか?いないでしょう?まあ素材の味を楽しめみたいな料理もあるのであれですが・・・。それにしても塩胡椒くらいはするでしょう。

これから『9-nine-』をプレイしようとしている方は、冒頭で私が言ったことに注意してプレイしてみてください。そうしたらきっと『9-nine-』の世界を存分に楽しめるはずです。

・シナリオ

22/25

王道は抑えており、次章への引きもよく決めるところは決めていたシナリオだったと思います。中だるみもなく先が気になる展開が多いのでどんどん進められました。

プレイ時間も20時間くらいとちょうどよく、とっつきやすいシナリオだったと思います。

ただ他にSFなど色々よく読む人でしたらネタバラシの驚きはそれほどないかもしれません。

なんにせよノベルゲーム初心者にも強くおすすめできるシナリオでした。

・キャラクター

26/30

基本みんなかわいくて応援したくなるようなキャラクターでよかったのですが、翔と都と天の背景描写が足りないと感じました。

翔とかあのコミュ力で集団行動できない設定は無理あるやろ。翔をもうちょっと陰の者寄りにして、翔に悲しき過去・・・とかやってくれればもっと感情移入もしやすくテーマも見えやすかったかと思います。

天は本当にかわいい。天は本当にかわいい(大事なことなので)。

・読後感

18/20

クリア後は若干のもの寂しさしかありませんでした。

ですが、話を理解した後だと、自分が物語の一員だったと実感でき、翔達の存在を遠くても確かに感じられ、別れの実感が湧いてきてとても切ない気持ちになりました。

なかなかない切なさですよこれは。

・その他

10/10

主人公に声がある+5、OP曲は一章と新章のが好き+3、声優が豪華+2、システムに問題あり+0、なんで18禁版+新章のセットがねえんだよ-5、天ちゃんがかわいい+5(露骨な点数調整)

翔役の阿部敦さんとか、都役の福圓美里さん、ソフィー役の新井里美さん。このあたりはアニメを少しでも見る人なら声を聞いたことがあると思います。とある魔術の禁書目録かな?)

どの方も実力派声優ばかりで、クリア後のインタビューを聞いても、この人キャラクターのことよく理解してるなあと感心したりしました。

システムについては、他のバージョンは知りませんが私がプレイしていたPS4版では音がぷつっと切れることが1時間に一回くらいあって怖かったです。それと既読文の色を変える設定が見当たらなくてちょっと不便でした。

総評

9-nine-点数グラフ

86/100

設定もとっつきやすいし、シナリオとキャラクターも音楽も高水準だしで、十分おすすめできるゲームです。

しかしながら、問題なのは一部のキャラクターの描写不足と、テーマの理解のしづらさと、売り方の意味不明さです。

なーんで完全版が全年齢版しかないんですかねえ。ちゃんとした18禁版の完全版も出してくれよー頼むよー。

これからプレイする方は18禁版を強くおすすめします。

まあリンクはSwitch版とPS4版貼るけどね。

ほな、また・・・。みんなも人との絆を紡いで真剣に生きていこうな!