Vita版が安かったし前から気になっていた作品だったのでプレイ。
FDと合わせてプレイ時間は40時間くらい。ネタバレ注意。
ぼくらはみんな、呪われている。みんなぼくらに、呪われている。
まずはあらすじから。
と思ったけど長くなるのでこちらをどうぞ。
「呪われている」というのは、比喩でもなんでもなく、ガチの呪いである。
主人公やヒロイン達はある禁忌を抱えており、それを破ってしまうと死の危険にさらされてしまう。
いくつか例をあげると、るいは約束ができないし、花鶏は助けを求めることができないし、こよりは知らない扉を開けることができないなどである。これらを破ると、ノロイと呼ばれる存在が破った人を殺しに来る。
死の危険にさらされてしまう、と言われると大げさだが、こういった「呪い」はるいは智を呼ぶのキャラクターたちではなくても、誰しも抱えているものなのではないだろうか。
例えばこれを書いている私だと、対人恐怖症で人が近くにいるとパニックになってしまうとか。
こういった普通の人とは違う欠点(呪い)は大なり小なり誰しも持ち合わせているものだと思う。
閑話休題。
とまあここまでが「ぼくらはみんな、呪われている」の意味である。
で、そうした呪いを持った者達が集まり、助け合うために同盟を結ぶ。
そして智やるい達は、個でなく集となった。
すると、またもや違った問題が出てくる。
一人でいれば、ただ生きているだけでよかった。
けれども、集団となればそうはいかない。ちょっとしたことで喧嘩したり、傷つけ合ったり、よくも悪くも他者に縛られてしまう。これもまた呪いと言えるだろう。
後半の「みんなぼくらに、呪われている」という意味はこういうことである。
「るいは智を呼ぶ」はこれらの二つの呪いをやっつける話なのだ。
るいルート
るい~こよりルートまでの主なテーマは「ぼくらはみんな、呪われている」である。
呪い持ちである登場人物たちは、呪いと、その代わりとして特別な能力である才能を抱えていて、その原因である性格を受け入れたり問題の解決策を示したりし、それらを肯定していく。
なので、まずはキャラクターの性格、呪い、才能、解決策までをセットに考えていきたいと思う。
まずはるいだが、性格は「単純、人見知り」などが思いつく。
呪いは「約束ができない」で、才能は「身体能力の向上」である。
「人見知り」というのは、「他人を簡単に信用できない」と言い換えることもできる。すると、「約束ができない」という呪いと繋がってくる。
「他人を簡単に信用できない」から「約束ができない」。
「単純」というのも「身体能力の向上」と関係してくる。
たんじゅんココロモリはかげぶんしんで回避率二段階上昇だし、ダイジェットのすばやさ二段階上昇でほとんどのポケモンの上を取れるし、めいそうやどわすれなどで能力あげまくってアシストパワーで超火力がだせるぞ。すごいぞーかっこいいぞー。(強いとは言ってない)
閑話休題。
とまあこんな感じでどのキャラクターも性格と呪いと才能が結びついている。
るいの呪いは「約束ができない」というものであり、「未来の保証ができない」ということでもある。
るいは、父親から裏切られたことにより、他人を簡単に信用できなくなっていた。
けれどもそれは誤解であり、るいは過去を受け入れた。
「未来」の保証ができないなら「過去」と「今」を大事にすればいい。
るいは「過去」を受け入れ、「今」を大事に生きることにより、「未来」の保証ができないという呪いを受け入れたのだった。
花鶏ルート
花鶏の性格は一言で言うなら「孤高」だろうか。
呪いは「他者に助けを求めてはならない」で、才能は「思考の高速化」。
孤高でプライドが高いから、「他者に助けを求められない」という呪いだし、孤高で一人でなんでもできる頭の良さがあるから、「思考の高速化」という才能なのだろう。
解決策は、「他者を助ける」である。
他者に助けを求めることができなくても、他者を助けることはできる。
助けられた他者は、次は花鶏を助けてくれるだろう。
そうやって呪いと折り合いをつけ、花鶏と智は助け合いながら生きていくことを決めるのだった。
こよりルート
こよりの性格は一言で表すなら「子供」である。こよりは設定や他のキャラの年齢から考えると中学1年生である。18歳以上とは・・・。
呪いは「初めて通る扉を開けてはならない」で、才能は「運動の再現能力」だ。
「子供」だから知らない場所に行くには誰かに手を取ってもらわないといけないし、「子供」だから誰かの真似をする。
さて、「子供」でいることはそれほど悪いことなのだろうか。「大人」は利益のために生きるが、利益よりももっと大切なものがあるはずだ。それは自由と誇りである。
こより達は、「大人」の理屈よりも、「子供」の誇りを選んだ。
そうしてこよりは「子供」という呪いと才能を受け入れ、「大人」に背を向け、智達と社会の裏側で生きることに決めたのだった。
伊代ルート
伊代ルートと茜子ルートの主なテーマは「みんなぼくらに、呪われている」である。
というのは、伊代は出会った時点で呪いを自分なりに解決していて余裕があるし、茜子は呪いの内容がそのまま他者との関わりに関係してくるからだ。
まずは先にいつものように「ぼくらはみんな、呪われている」のほうをやっておこう。
伊代の性格は「空気が読めない、優柔不断、真面目」あたりだろうか。
呪いは「固有名詞を呼んではならない」で、才能は「道具の最適化運用」だ。
優柔不断というのは物事をハッキリと定義づけるのが苦手だということ。だから「固有名詞を呼んではならない」という呪い。才能のほうは・・・よくわからない。空気が読めず思ったことをズバズバ言えるからマニュアルも読まずに道具をマスターできるって感じだろうか。
伊代は、ある出来事から一般常識に疑問を持つようになった。けれども伊代は真面目で良識的で常に公正でなければならないと考える人物であったから、そういった常識とは違うマイルールを設定してそれに従うことに決めた。
そういったマイルールによって「空気が読めない、優柔不断、真面目」という性格と折り合いをつけたのだった。
さて、伊代ルートはあんまり伊代に焦点が当たっていない。伊代ルート序盤の一緒に買い物行って料理するシーンだけで伊代の話は終わったようなものである。伊代はすでに呪いと折り合いをつけ、光の世界に生きている。裏の世界の住人である央輝が伊代へ当たりが強いのはそういう理由からだろう。なのでこのルートでのほとんどは呪いについて探る話と、7人目の仲間の惠の話だ。
恵については次回のFD感想で書くこととし、次に進ませていただく。
茜子ルート
まずはいつものやつから。
茜子の性格は一言で言うなら、何を考えているかわからない「不思議ちゃん」だろうか。
呪いは「人に直接触れてはならない」で、才能は「人の心を読む」である。
「不思議ちゃん」になった経緯から考えなければならない。
茜子は人と本音で触れ合うのが怖いからピエロを演じているわけである。
なぜそこまで人と触れ合うのが怖くなったのかは「人に直接触れてはならない」「人の心を読む」という呪いと才能が一番の原因なわけだが、性格が先か呪いが先かの問題はまあおいておこう。家族に売られたっていうのも大きな要因なわけだし。
人と触れ合うのが怖いから「人に直接触れてはならない」という呪いで、人と触れ合うのが怖いから「人の心を読む」という才能。ある意味一番わかりやすいキャラである。
さて、このルートのテーマは「絆の肯定」である。
そのまま茜子の解決策と繋がっていくので書いていこう。
智達の同盟は、このルートになって初めて8人全員が揃う。だが、ちょっとした隠し事から一度全員がばらばらになってしまう。
そこで智は思った。呪いに触れないためには一人でいるのが一番いい。そもそも誰かと一緒にいることもある意味呪いだ。ちょっとしたことで傷つけあってしまう。けれども、みんなと一緒にいたのはそれでも楽しかったから。誰かと一緒にいて、誰かのためになにかすることは楽しい。そうやってお互い見えない何かをやり取りし、手を繋ぎ合えば呪われた世界をやっつけることができるのではないか。
こうして智達は絆と呪いを肯定した。
そもそも孤独でいたとしても、それは本当に一人なのだろうか。ぼくらはみんな確率的だ。僅かな選択で未来は変わってしまう。孤独でいたとしても、他の人の選択が自分に影響を与えているんじゃないだろうか。孤独でいたとしても、ぼくらはみんなに呪われている。どうしても呪いから逃れることはできないのだ。ぼくらは手を繋ぎ合い、呪われた世界をやっつけないといけない。
だから、これは呪いの話だ――――。
感想
いろいろ書いたが、果たして普通に一周プレイしただけでここまで話を理解できた人がいるのだろうか。
私は無理だった。
本編を最後までプレイして一番に思ったことが、
であり、何が言いたいのかさっぱりわからなかった。
今回ここまで話を理解できたのは、FDをプレイしたのと、この感想を見つけたからであり、
http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=10329&uid=gosa
本編だけではここまで理解できなかった。
gosaさんありがとうございます。私なりの解釈で少し内容を変えさせていただきましたが、るい智の理解にすごく役に立ちました。
なんせテーマに関係ない不純物が多すぎる。
るいルートで気になったのは、遺産問題を完全に放置して本以外の遺産を全部持っていかれたこと。花鶏に相談してたら一発で解決してたと思うんですがそれは・・・。まあるいはベーシストの腕で生きていけるし智も莫大な遺産があるからるいの親の遺産なんてどうでもいいわけだが、もやもやすることには変わりない。
あと呪いを受け入れるまでの過程があんまり書かれていると思えない。こよりの姉を助けるとか言われてもいきなり出てきてなんやねんって感じやし、こよりルートをやった後に考えると結局こより姉に利用されてただけっていうね。まあ同盟のみんなで協力して何かを成し遂げるには丁度いいイベントだったってところだろうか。もっと人見知りの解消とかそういうところに話を割いてほしかったな。
花鶏ルートでは、花鶏の言動にイライラした。今では花鶏も好きだが、序盤である花鶏ルートの時点ではキャラにそんなに思い入れもないし、花鶏が仲間を疑う→みんな離れていくっていうムーブを繰り返されても、なんやこいつ・・・としか思わなかった。花鶏の微妙に棒読みな声ももやもやに一役買っていた。
こよりルートだけはなんとかテーマが伝わってくる。だからこよりルートで全体テーマは子供と大人なのかと勘違いした。それだったら前2ルートがもやもやした終わり方だったのも納得がいくし。しかし全てのルートがもやもやした終わり方なのは別の理由がある。それはFDをプレイしないとわからない。
伊代ルートと茜子ルートは、呪いを解こうとし始めたのがよくわからない。
実際に精神疾患やらなんやら持っている人ならわかると思うが、現実に呪いを完全に解くことはほぼ不可能である。解けたように思えても、それは呪いとの付き合い方や回避方法を学んだだけだ。だから呪いを解いてこれからは呪いと才能なしでうまくやっていくと言われてもなーんにも響かないわけだ。
とまあ文句ばっかり言っているが、全ルートもやもやした終わり方なのは理由がある。
それはFDで明かされることであり、正直私は本編だけではあんまり評価できないかなって感じだった。
FDで言っている内容も、本編をよくよく読めば理解できるのかもしれないが、私の理想は一周プレイして言いたいことが6割~8割理解できることであり、今回私は3割くらいしか理解できなかったのでちょっと・・・って感じ。
プレイ中にある程度は理解できてないと楽しめないんですわ・・・。
評価に移る。
キャラ3.5/5、テーマ3.5/5、展開3/5で65/100
FDがあるのを考慮するなら、キャラ4/5、テーマ4.5/5、展開3.5/5で80/100
かな。
OP曲貼るの忘れてた。
るいは智を呼ぶ 絆 ORIGINAL SOUND TRACK NEW OP
昔からエッッッッゲ曲でTOP10に入るくらい好き。この曲が好きすぎてちょっと期待しすぎてたかも。
でもなんだかんだでこの曲通りの話だったと思う。
あとWikipediaを見て初めて知ったんだけど、作品のモチーフに「南総里見八犬伝」があるらしい。これを知ってキャラたちがとてもかわいく感じるようになった。
来週FDの感想書きます。FDは呪いの謎の解明とかいう呪縛から解放され、こういうのでいいんだよっていう内容だったので今回みたいに愚痴を書きまくることはないと思います。というか私はFDのほうは本編と違ってめちゃくちゃ出来が良いと感じました。本編はあえてもやもやの残るエンディングにするのと呪いの謎に迫ることに縛られすぎです。そのもやもやの残るエンディングというのもFDをやって初めて活きるわけですし。本編だけだと未完成品だと言わざるを得ません。序盤の共通ルートを渡したらあっちが本編でむしろこっちがFDと言ってもいいくらいです。まあいろいろわかった今プレイしたならもしかしたら本編も面白く感じるかもしれないけれども。