唯唯漂うただの海藻

本やゲームなどの感想とか好きなことを書いていく。

「紙の上の魔法使い」感想-理不尽な現実との付き合い方-

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友達につい先日発売された「冥契のルペルカリア」をステマされたので、前作的な立ち位置であるこの作品「紙の上の魔法使い」からプレイすることに。

 

 

魔法の本とかいう理不尽

まずはあらすじから。

とある島に存在する私設図書館。本が好きという共通点をもって出会ったヒロイン達と主人公はやがて親しい間柄となり、2年間のブランクを経て再会した。しかしそこには「魔法の本」なるものが存在し、これを開いた者はその願いに応じて現実世界の誰かと共に本の物語を強制的に演じさせられるのだった。この強制から開放されるためには、魔法の本が満足するだけの物語を演じきるしかない。主人公は魔法の本を通じ、ヒロイン達との数々の幻想的で切ない物語を体験していくのだった。

引用元:Wikipedia

 「紙の上の魔法使い」のキャラクターたちは、魔法の本によって強制的に物語を演じさせられていく。

当人達の意志とは関係なく、誰かを好きになったり、誰かに忘れ去られたり記憶を改ざんされたりする。

理不尽極まりない。

現実は辛い

しかし、こういった理不尽は魔法の本だけなのだろうか?

私達の生きているこの現実も、理不尽にあふれている。

魔法の本は、理不尽な現実、理不尽な環境の象徴とも言えるかもしれない。

私は、「紙の上の魔法使い」はそういった理不尽な現実との付き合い方についての話だと感じた。

物語は演者の演技次第

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魔法の本の設定だけ聞くと、キャラクター達がただ無理やり物語を演じさせられているだけに感じる。

実際に 「紙の上の魔法使い」のキャラクターたちもその事について悩んでいく。

だが、魔法の本はあくまで台本であり、演者の演じ方次第で物語はある程度変えることができるのだ。

「かげきしょうじょ!!」を読んでいるとその辺すごくわかりやすい。

同じ役でも演じる人物によって雰囲気や物語が全然違ってくる。

そんな「かげきしょうじょ!!」も今年アニメやるみたいなのでよろしく!!(宣伝)

kageki-anime.com

閑話休題

とにかく、物語というものは演者次第なのだ。

どんな物語、現実、環境であっても、演者は確固たる自分を持って行動すればいい。

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確固たる自分

さて、確固たる自分とはどうやって形成されるのだろうか。

主人公である瑠璃とヒロインのかなたは、それは誰かの特別になる努力をすることだと言う。

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自分というものは、人との交わりの中で形成されるもの。

ある人がその人はその人だと認めたなら、魔法の本や環境などによって変わってしまったように見えても、その人はその人なのである。

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それぞれの選択

さて、「紙の上の魔法使い」のキャラクターたちは実際にどうやって魔法の本(理不尽な現実)へ抗ったか見ていきたいと思う。

ここから先は思いっきりネタバレなので注意。

理不尽な現実との付き合い方というテーマについてはここまでで八割方書き切ったのでここでブラウザバックしていただいても構わない。

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(一応ネタバレ対策)

・・・・・

・・・・

・・・

・・

(ネタバレ対策終わり)

遊行寺 夜子・・・空想へ逃げる

月社 妃・・・自殺する

四條 瑠璃(オリジナル)・・・後追い自殺

伏見 理央・・・諦めて傍観者になる

日向 かなた・・・確固たる自分を持つ

・・・改めて書き出してみるとあまりにも酷い。

そう、「紙の上の魔法使い」は鬱ゲーである。物語の序盤で主人公とヒロインの一人が死んでいるので完全に幸せな結末にはならないしずっと鬱々とした雰囲気が漂っている。

シナリオは基本一本道で、選択肢によって各ヒロインルートへ分岐する。「G線上の魔王」や「穢翼のユースティア」みたいな感じである。

そしてある一人のルート以外は全てBADENDであった。

・・・まあひと目見ただけでわかると思うが、正解ルートは日向かなたである。

シナリオの進行順に一人づつ見ていこうと思う。

伏見 理央

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諦めて傍観者になったと書いたが、魔法の本の強制力によって何もできなかったというのが正しい。

恋をすることを制限されていながらも、その恋心は本物だったと泣くこのシーンは、アニメ「ましろ色シンフォニー」で紗凪達が滑り台で泣くシーンを思い出してゾクゾクした。(女の子が失恋するシーンっていいよね😊)

諦めて傍観者になるという選択について言及しておこう。

傍観者になるということは全てを諦めるということ。それで幸せな結末を迎えることができるはずはなかった。

理央の場合は強制力があって仕方のないことであったが、かなた達のように物語の流れを変える意志を持つことが必要だったと言える。

月社 妃

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正直に言って最悪の選択である。

妃が自殺したせいで結果的にあと二人の命が失われたし、他の人物もめちゃくちゃになって取り返しのつかないことになった。

最も周囲に迷惑を掛ける選択だと言えよう。

今になって思えば、魔法の本は演者の深層心理を引き出す道具みたいなものなので、あのままオニキスの不在証明を続行していたとしたら遊行寺夜子の兄である遊行寺汀が相手に選ばれたのではなかろうか。結果論ではあるが私としてはこの結末も悪くなかったと思うのだが。

みなさんも(私も)自殺しようとする前に周囲への影響をしっかりと考えましょう。

日向 かなた

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メインヒロイン。

確固たる自分をもつという選択についてはここまでで説明したので省く。

彼女のように確固たる自分をもっていればどのような現実、環境の中でも幸せに生きることができるだろう。

とにかく生命力が強い女の子であった。

かなたちゃん最強!かなたちゃん最強!かなたちゃん最強!

遊行寺 夜子

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真の主人公。

「紙の上の魔法使い」は、空想の世界へ逃げ続ける彼女が現実に生きるようになるまでの話とも言える。

物語の冒頭文からもこれは明らかである。

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まるで私のことを言っているみたいだあ・・・。

さて、現実から逃げ続けて空想の世界に引きこもることはそんなにいけないことなのだろうか?

実際に夜子と同じように現実から逃げ続けて空想の世界に引きこもっている私が言えることではないかもしれないが、実はいけないことなのである。

空想の世界へ逃げ続けている間にも現実は容赦なく進んでいく。

「紙の上の魔法使い」の物語がここまで悪い方向に進んでしまったのは、夜子がある現実から逃げ続けて放置していたことが原因だったのだ。

4年前の瑠璃がかなたから告白されたという出来事。夜子はその現実が受け入れられず、魔法の本によって関係者の記憶が操作された。その結果瑠璃とかなたはお互いのことを忘れ、瑠璃と妃が付き合うこととなった。

全てはこの出来事が原点であったのだ。

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夜子が前に進むためには、この出来事を精算・・・きっぱりと瑠璃にフラれる必要があった。

辛いとわかっている出来事でも、人はそれを乗り越えなければ先へ進めない。

そういった事の繰り返しが現実を生きるということだったのだ。

そして夜子はきっぱりと瑠璃にフラれて前に進み、瑠璃やかなた達と共に生き、確固たる自分を形成し、現実に生きていくのだった。

嫌なことから逃げ続けることも自分だけでなく周囲の人々も不幸にする。おいひきこもり聞いているか?😭😭

感想

いやーきついっす。話が重い重い。

話が重いのもそうだけど、ひきこもりに厳しくないっすか。

先週の「Fate/hollow ataraxia」もひきこもりに厳しかったし、そういう作品が多いように感じる。あとは「俺たちに翼はない」とか・・・パッとは思いつかないけど探したらいくらでもありそう。

物語の世界とは違って私の問題は複雑で、そう簡単に精算できないんですわ😭😭。

冒頭の、全ての物語を読むのが私の生涯であるといった文、共感しかない。

一生ひきこもって読書とゲームだけして生きていたい。誰か私を助けてくれませんかねえ😭😭。

 

さて、結構悪評を聞いていたこのゲームですが、私は結構楽しめました。

ちゃんと物語を理解すれば、ヒロインはかなたちゃん以外ありえないし、夜子と瑠璃がくっつくはずがないとわかるはずです。こういうビターエンドの作品大好き。あらすじしか知らないけど「恋×シンアイ彼女」とかね。まあエッッッゲーとしてそれが正しいのかどうかは知りませんが。

あ、でも物語後半までは没入度はかなり低かったです。

シナリオは全十三章で、だいたい一章読むのに2時間くらいかかってプレイ時間は全部で30時間くらいでした。

七章くらいからは怒涛の展開で一気に最後まで読み進めましたが、六章くらいまでは一日一章か二章くらいしか集中力が続きませんでした。

テーマと展開(構成)は素晴らしいのですが、キャラクターが生きていると感じづらかったんですよね。

ただテーマと展開に乗せてキャラクターが動いているって印象でした。まさに紙の上の存在。

特に主人公の瑠璃は終盤までいまいちキャラが掴めませんでした。まあこれもある意味伏線だったと言えるかもしれませんが。

唯一キャラクターが生きていると感じたのは日向かなたちゃんだけ。これもある意味伏線だったと言えるかもしれませんが。伏線伏線もうぜーんぶダイパリメイクの伏線

散々言われてると思いますが、誤字脱字や変換ミスなどが多いのも没入度が低かった原因かもしれません。

ボイスの切り取りミスまで発見しました。〇〇◎△$(噛んだ)・・・コホン・・・〇〇〇〇って感じのやつ。これは流石に笑った。

予約特典ストーリー序盤のかなたちゃんのボイスです。もしかしたら聞き間違えかもしれませんが。

OPがないのも寂しいですね。You Tubeで偶然OPを見てこの作品を思い出すってことができない。これから先どうやってこの作品のことを思い出せばいいのか。

あとクリソベリルは某雛見沢の悪霊レベルの無能。

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この作品を評価するなら、

キャラ2.5/5、テーマ4.5/5、展開4.3/5で75/100くらいでしょうか。

正直キャラは1や0でもいいくらいでそのほうがむしろ評価してる感ありますが、かなたちゃんが可愛かったので2.5とします。

テーマは空想についてもう少し欲しかったです。最後の魔法の本を破り捨てるか捨てないかの選択肢は、空想もうまいこと使って生きていくか完全に捨て去るかの選択肢かと思ったのにそんな感じではなかったので。もしかしたら私の読み込みが甘くて見逃してるだけかもしれませんが。よかったら誰かこの記事を踏み台にして私の一歩先を行った考察記事を書いてください。私は力尽きました。そもそも全然違うわって批判してくれても構いません。個人的には破り捨てるの選択肢は瑠璃と理央の本も破り捨てて欲しかったですね。かなたちゃんにぶち転がされそうですが。それで若干のバッドエンドになれば、現実でうまくやっていくには時には空想(瑠璃や理央)を使うのも悪くないと言っていると納得できました。

展開については、伏線がどんどん回収されていって面白かったのですが、多少のご都合展開で少々-です。正直割と何でもありの世界ですよね。

テーマと展開は高水準でキャラだけが惜しかった印象でした。

 

「紙の上の魔法使い」面白かったですし、「水葬銀貨のイストリア」と「冥契のルペルカリア」も友達から借してもらう約束をしているのでいずれやりたいと思います。(ゲームと本買いすぎて最近金欠なんです許して😭😭)