唯唯漂うただの海藻

本やゲームなどの感想とか好きなことを書いていく。

「BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣」感想-女子校版ペルソナ。個性化の過程の話-

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BLUE REFLECTIONのアニメが放送されるということで、3月くらいからちょくちょく進めていて最近クリアしました。

プレイ時間は測っていないので詳しくはわかりませんが、トロコンして30時間くらいだと思います。

以下ネタバレ注意。

BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣 - PS4

BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣 - PS4

  • 発売日: 2017/03/30
  • メディア: Video Game
 

 

 

あらすじ

主人公の白井日菜子(以下ヒナ)は、将来を期待されたバレエダンサーだったが、足を怪我して踊れなくなってしまう。そのことで心を閉ざし、入学から数ヶ月遅れて高校に初登校するも、そこで再開した元クラスメイトの西田早苗が感情を暴走させ、ヒナは異世界へ飛ばされてしまう。そこには怪物がおり、なんとか逃げ出すと、今度はいつの間にか指にはめられていた指輪から声が聞こえてくる。声の指示に従うと、「リフレクター」という魔法少女に変身したのだった。モンスターを倒すと、近くにきれいな光を見つける。ヒナがそれに触れると、早苗の心の声が聞こえてきた。ヒナはその声に同調し、光はヒナの中に入っていくのだった。現実世界に戻り、教室に入ると、司城夕月(以下ユズ)と司城来夢(以下ライム)という姉妹が話しかけてくる。二人の声は、先程指輪から聞こえてきた声と同じだった。ヒナは、ユズとライムの力でリフレクターに変身していたのだった。ユズとライムは、学校に襲ってくる原種という怪物をリフレクターの力で一緒に倒して欲しいと言う。ヒナはユズとライムと一緒に学校で人々の悩みを解決し、異世界(コモン)で早苗のときのような光(フラグメント)を集めながら、原種と戦っていくのだった。

 

・・・あらすじWikipediaにも公式サイトにもなかったから自分で書きました。あらすじ書くの難しい。何をどこまで書いたらいいのかわからないわ・・・。

ヒナ達が強くなるには、フラグメントを集めないといけません。フラグメントは感情の塊であり、ヒナ達が通う学校では度々感情が暴走してしまう人達が現れます。感情が暴走した人にヒナ達が指輪をかざすと、コモンへ行くことができ、ヒナ達はそこでフラグメントを探します。そしてヒナがフラグメントに触れて気持ちを理解し、フラグメントを固定化し自身に統合していきます。

さて、コモンというのはユズとライムが言っていたように集合的無意識です。

集合的無意識といえばユング心理学ですね。なのでちょっとユング心理学について語りたいと思います。

個性化の過程

昔3週間くらいかけて「自我と無意識」というユング心理学の本を読んだのですが、今となってはほとんど覚えていないので、にわか晒さないレベルのざっくりとした説明で許してください😭。なんか間違っててもごめんなさい許してください😭。

自我と無意識 (レグルス文庫)

自我と無意識 (レグルス文庫)

 

ヒナがしていることは、ユング心理学でいう個性化の過程です。

個性化の過程について一から説明するのは面倒なのでとりあえずリンク貼っておきます。

www.j-phyco.com

「自我」「自己」「個人的無意識」「集合的無意識」「タイプ論」「シャドウ」。このあたりをなんとなくでいいので理解してほしいのですが、一応私からも軽く説明します。

たぶん「タイプ論」から理解するのが一番わかり易いと思います。

ユングは、人の性格を「外向」もしくは「内向」優位か、「思考」「感情」「感覚」「直観」優位か、で2*4の8タイプに分けることができると考えました。

gachan.starfree.jp

よかったら診断してみてください。ちなみに私は内向感情型になりました。

で、どれか1つになるわけですが、これは自己の表面化している部分に過ぎないんです。

先程貼った自己と個性化の過程のリンクに球体の図があると思いますが、その図の意識の部分に出ているのが診断結果の性格です。残りの性格は無意識下に押しやられています。

無意識下に眠っているのは自分の可能性です。人は成長していくにつれ、ある可能性を選んだり、捨てたりしています。選んだものが意識となり、捨てたものが無意識となるわけですね。タイプ論はその一例です。

意識と無意識を合わせたものが心そのものであり、その真ん中に自己があります。意識として表面化している部分の真ん中にあるのが自我ですね。

個性化の過程(自己実現)とは、無意識を理解して意識へ統合し、自我を自己という完全体に近づけていくことを指します。

で、その方法のひとつが、他者の感情(ユング心理学の用語でコンプレックス)と向き合うことなんですね。

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他者の感情と向き合うことの話の前に、集合的無意識の話もしておきましょう。

無意識は、個人的無意識と集合的無意識のふたつに分かれています。

集合的無意識とは、個人の無意識の更に深いところの無意識、人類全体として共通する無意識って感じです。いや厳密には違うみたいですが、説明するの面倒ですし私にはうまく説明出来ないのでそんな感じだと思ってください。

例えば、竜というものは中国でも西洋でも同じような姿で伝説として考えられました。竜の例のように、離れていても人々は同じようなことを考えます。なのでユングは、人類はみんな集合的無意識で繋がっていると考えたわけです。集合的無意識という他者と共有しているものがあるからこそ他者と交流ができるわけです。

他者の感情と向き合うことについての話に戻します。

まず、集合的無意識を介して他者の意識へアクセスし、自分とは別の可能性を選んできた他者の意識から生じた感情と向き合う。次に、ある程度理解した他者の感情から、自分が無意識下へ捨ててしまっていた可能性を理解し、無意識から意識へ統合する。そしてその可能性を保持したまま再度自分の可能性を選ぶ。そうやって自我を自己という完全体に近づけていく作業を個性化の過程というわけです。

もしかしたらそれでも理解する前と同じ選択をするかもしれません。ですが、理解して選ぶのと理解しないで選ぶのでは全然違ってきます。

色々な可能性や選択肢を理解し、それでもそれを選ぶなら、その選択は色々な可能性や選択肢を理解する前よりも自己に近づいた自我が選んだものであり、理解する前よりも自己としての意志が存在してると言えると思います。

それと、理解することで一時的に別の性格を使用する(ペルソナを使う)事もできますよね。ペルソナの話までしだすと一生終わらないのでやりませんが。

ここまでを乱暴にまとめると、他者と向き合って感情を理解しそこから自分と向き合え!って感じです。他人は自分を映す鏡だとか人の振り見て我が振り直せとも言えます。簡単ですね。

「シャドウ」について話していませんでしたが、簡単に言うと自分が最も抑圧している部分のことです。その名の通りその人の影の部分のことであり、まあ真逆の人格とでも思ってくださればいいです。

「BLUE REFLECTION」で明らかにヒナのシャドウだろと思うキャラクターが出てきたので触れておきました。そろそろ「BLUE REFLECTION」の感想に戻ります。

エンディングまでのストーリー

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ヒナはいろいろな人のフラグメント(ユングの用語だとコンプレックス)に触れ、他者の感情を理解し、自己理解を進めていきます。

例えば真田凛。凛は好きな男子に告白しようかしまいか決められずにいました。ヒナはその感情に触れ、自分も足を怪我をして、これからどうしようか決めて前に進むのが怖いことに気付きます。

他には森川更紗。更紗はヒナのライバルでありヒナを目標としていましたが、ヒナが怪我をして踊れないことを知り、目標がいなくなることに恐怖しました。ヒナはその感情によって自分もバレエという目標を失って何を目標に生きればわからないことに気付きます。

他にも10人ほどいますがあと一人だけ紹介します。

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蜷川麻央という人物は、人の悪意を信じており、悪意をコントロールすることで生徒たちを守っていました。ヒナは麻央のフラグメントに触れるのを拒絶します。麻央もまたヒナを拒絶し、ヒナは現実世界に戻されます。

お互い拒絶し合ったのは、先程言ったシャドウの関係だからです。おそらくヒナと麻央で性格診断したら真逆の結果になるのではないかと思います。めんどくさいのでやりませんが。で、麻央は悪意を信じて生徒たちを守っていますが、ヒナは善意を信じて生徒たちを守っています。ヒナは麻央の気持ちを聞いてこう思います。救ってくれる人がいなかった場合のもうひとりの私だ、と。逆だったかもしれねェ…

シャドウは受け入れるのに苦労するかもしれませんが、自分の影の部分なので理解できればかなりの自己理解に繋がります。麻央の出番が若干多いのはそのせいでしょう。

「リフレクター」とは撥ね返す者。他者の感情を理解し自己を理解し、またこちらからも先程理解した自己の感情をぶつけて他者にも自己理解を促す。そうやってお互い成長させていく。コミュニケーションとは素晴らしいものですね。

で、終盤の話。ユズとライムに、最後の原種を倒せばユズとライムは消えること、世界は改変されヒナが学校に来る前まで戻されることを明かされます。ヒナは悩みますが、最後の原種を倒すことに決めます。「ユズとライムが憧れているエトワール"輝ける星"としてふさわしい自分でありたい。だから前へ進む。」これはここまで何度も他者の感情に触れて自己理解を進めたヒナの結論です。その決断はほぼ自己そのものからのものと言ってもよく、ニーチェの言う「力への意志」と呼べるくらい強い意志でしょう。だからヒナは改変後の世界でユズとライムの言葉を思い出し、ユズとライムが信じるエトワール"輝ける星"としてふさわしい自分でいるために前向きに学校へ向かいます。「いつかまた君と会いたい」という力への意志で人外になって世界が何巡としてまでも篝に会いに行った「Rewrite」の瑚太朗のように。おそらくヒナはまたみんなと友達になれたのでしょうね。

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ストーリー感想

中盤までは同じような流れの繰り返しですし、ゲーム部分は作業ゲーなところもあるしで結構退屈でした。序盤で個性化の過程の話だってわかったからなんとか続けられた感じです。

麻央が仲間になったあたりからはアツかったです。なんとなく予想はできていましたが、ヒナが更紗に原種を倒しても足は治らないと言うシーン、ユズとライムがヒナに自分たちのことを告白するシーンはうるっときました。この2つのシーンは百合度もめちゃくちゃ高かったです。

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原種とかの設定はエヴァっぽかったです。なんか原種ってエヴァ使徒っぽいなと思ってたら、ユズとライムは地球で戦って勝った原種の一部が人類だとか言い出し、人類の元である原種ダアトが人類増えすぎて絆の力が弱くなってきたから人類は一つにまとめるべきだとか人類補完計画みたいなことも言い出し、やっぱりエヴァやんけ!となりました。

設定はエヴァっぽかったですが、基本的に雰囲気ややってることはペルソナシリーズっぽかったです。放課後に一緒にでかけて仲良くなってイベントクリアしたらフラグメントや経験値がもらえて強くなるって感じが。ただまあ移動できるのは女子校内だけなのでペルソナに比べてもの寂しさはありますけれども。戦闘で勝って強くなるんじゃなくて、人と仲良くなって強くなるっていうのがとても好きです。個性化の過程っていうテーマとも合ってますね。

人類は一つにまとめるべき発言についても一応触れておきましょうか。それに対しヒナは、人が増えて絆の力が弱くなってきたけど、だからこそ長い時間をかけて紡いだ絆に価値がある。強制的に紡がれた絆にはなんの価値もないと一蹴します。まあこれは正しいでしょう。「星の王子さま」でも同じようなこと言ってましたし。まあ私なら面倒だからそれでいいよと言っちゃいそうですが。人類補完計画バンザイ。自己だとか他者だとかめんどくさいよなあ!?😡🐯

星の王子さま (新潮文庫)

星の王子さま (新潮文庫)

 

キャラ、カップリング感想

まあ私は百合豚なんでね。カップリングの感想をちょこっと書きたいと思います。

日菜子×更紗

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更紗は見た目からツンデレ系かと思っていましたが、デレが9割くらいのめちゃくちゃいい子でした。

さっきも言いましたが終盤にヒナが更紗に原種を倒しても足は治らないと言うシーンがめちゃくちゃいいです。更紗はヒナのためにすごい苦しんでいて、ヒナがフラグメントでその感情に触れ、自分のために苦しんでくれる人がいることを理解し、そして心を読んだヒナも心を読まれた更紗も照れる。あー尊死。語彙力がなくてうまく伝えられないのがもどかしいです。

日菜子×ユズ、ライム

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死ぬ前に日菜子に憧れて、死んだ後クラスメイトになってまで日菜子を助けるってのが素晴らしい。ユズとライムって日菜子と同い年ではないと思うのですが作中で触れてないですよね?私はユズとライムは生前10歳前後だと思って見てました。おねロリ最高。

日菜子×しほり

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隙あらば下着を取り替えようとしてきたり、いざ取り替えに成功したら襲ってくるしでめちゃくちゃ笑いましたが、精神的百合というより肉体的百合なので私が求めているものとはちょっと違います。

香織×梨佳

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梨佳が香織のことをいつも心配していて、夫婦って感じでよかったです。

その他雑感

・アニメ一話だけ見たけどあれじゃ設定も何もわからないと思う。作画もなんともいえないしあれ見てゲームやってみたいって思う人いるのか?

・麻央は仲間になった後は肯定的に書かれてたけどいじめを誘導したり盗撮事件を誘導したりめちゃくちゃしてたような。多少の犠牲は仕方ないとでも思ってたのか?

・モブの民度低すぎ定期。

・BGM素晴らしい。

・校内でキチゲ解放してる人見るたびに草生える。

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・基本的にヒナとあと一人とモブだけでイベントが進むのでもっとみんなでワイワイするイベントが欲しかったかも。

・このゲームお風呂とかシャワーとか更衣室とかでやけに肌色多い。エッッッッッッ。

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・フリー期間は作業ゲーだったから別のことしながらプレイしてた。ご察しの通り「ノラとと」と同時進行してました。

・バトルはテキトーにやってたら中盤以降きつくなってくるけどフラグメントをちゃんと考えて装備して強化なりしてたら余裕になる。雑魚戦はエーテルアタックつけた全体攻撃ぶっぱ、原種戦はエーテル貯めてユズでヒナにバフしてライムでデバフしてヒナでオーバードライブするだけ。ヒナの技には原種特攻フラグメントをつける。パンやお菓子はほとんどヒナに食わせる。防御系はライム。

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・久しぶりに丁寧語で感想書いた気がするけど気分であって特に理由はなし。

・「素晴らしき日々」の論考だったり、「Rewrite」のニーチェだったり、今回のユング心理学だったり、哲学や心理学の要素を盛り込むと物語に深みが増して好き。(理解できているとは言ってない)

・「BLUE REFLECTION」をプレイしてユング心理学の考え方が気に入った人は「少女革命ウテナ」というアニメも見ましょう。アニマやらアニムスなど、もっと深いところまで触れられています。

ユングの個性化の過程とニーチェ力への意志は私の大好きな考え方。あとはアドラー心理学の共同体感覚とか好き。(実行できているとは言っていない)

・まあ読書やアニメ鑑賞映画鑑賞とかでも他者の感情に触れることはできるからね。読書やアニメ鑑賞映画鑑賞とかも個性化の過程に繋がるよね。こっちが一方的に触れるだけでリフレクションは出来ないけどね。いやこうやって感想ブログ書いてることがリフレクションになるか?ならんな。

鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。

デミアン」ヘッセ

デミアン(新潮文庫)

デミアン(新潮文庫)

 

卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。我らが雛で、卵は世界だ。世界の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでいく。世界の殻を破壊せよ。世界を革命するために。

少女革命ウテナ

自我だとか自己だとか無意識だとか難しく考えなくても、人と関わったり読書したりして他者の価値観と向き合い自分と向き合うことで今の自分の殻を破ろうってだけの話で、まあみんな意識せずとも普通にやってるよね。だから人は人と関わったり読書したりするのをやめられないわけだし。少なくとも私はだから読書が好き。

ほな、また・・・。